小中高校の数学教育活動に携わって20年になる。全国各地の学校に出向き、出前授業などをしてきた。その際、生徒から様々な質問を受けるが、大人が答えられなかったり、間違って答えたりするものも少なくない。子供のころに習った簡単なことでも、長い間に忘れてしまっているのだ。勉強の仕方に原因があることもある。今回は、そんな算数の問題の中からいくつか紹介しよう。
電卓でどんな数でも√を何度も押すとなぜ1になるの?

10年ほど前、静岡市内のある小学校で出前授業をしたときのことである。アンケートを取らせていただいたところ、6年生から興味深い質問があった。
「でんたくに√っていう記号があるけどなんですか。どんな数でも√をずっとやれば1になるのはなぜですか」
これは、たとえば81に対して、次々と正の平方根をとっていくと、9、3、1.73…となって1に収束すること。あるいは0.00000001に対して、次々と正の平方根をとっていくと、0.0001、0.01、0.1、0.316…となって1に収束すること、などを意味している。
どうしてこうなるのか。答えられる大人はかなり少ないと思う。大学の数学の範囲で説明できるが、電卓で遊んでいてそのことを発見した小学生のセンスには驚かされる。
「円周りつは、およそでなく何ですか?」というのもあった。ほとんどの大人は円周率の近似値3.14を知っているものの、円周率の定義をすぐ答えられる人は多くない。そんな質問をいきなり子供からされても返答に困り、「円周÷直径」をすっかり忘れていることに気付かされる。そこを突いた鋭い質問には感服した次第である。
実際、その後、学生を含む多くの大人の方々に「円周率は何ですか。その定義(約束)を述べていただけますか」と質問してみた。すると、「えっ、3.14じゃないですか」という答えが多く、正解の「円周÷直径」が思いのほか少なかったのである。
ほかにも、大人が間違ったり説明できなかったりする問題がある。