アメコミ人気が本格化 バットマン前史「Gotham」
海外ドラマはやめられない!~今 祥枝
アメリカの名門マンガ出版社であるDCコミックスが生んだキャラクターの中でも、とりわけ人気を誇るバットマン。2014年は誕生から75周年ということもあり、アメリカはもとより日本でもバットマン75周年記念のイベントなどが開催されています。2014年10月に行われた、史上最多の15万人以上を集客したニューヨーク・コミコンでは、映画の歴代バットマンの衣装が展示される75周年記念ブースがイベントを大いに盛り上げていました。
そんななか、米国の批評家が最も期待する番組にも選ばれたのが、バットマンから派生した『Gotham』です。
バットマンが登場する以前のゴッサム・シティを舞台にした本作は、後にバットマンの協力者となり、警察本部長に昇進するゴードン刑事(下の写真左)が、相棒ハーヴェイ・ブロック(同写真中央)と共に悪に立ち向かうクライム・サスペンス風の『バットマン』前日談です。主演は、『The OC』や『サウスランド』のべン・マッケンジーが務めています。
重厚でダークな世界観
物語はオリジナルですが、少年時代のブルース・ウェイン(将来のバットマン)との出会いから、ジョーカーやペンギン、キャットウーマン、ポイズン・アイビーらおなじみの敵役の前史も登場。彼らがいかにして異形の者と化し、暗黒面へと落ちていったかの過程が明かされていくと同時に、映画スターのジェイダ・ピンケット・スミスふんするクセ者フィッシュ・ムーニー(上の写真右)などの新キャラクターも登場します。
よく作り込まれたリアリティーのあるダークな世界観は、クリストファー・ノーラン監督の映画『ダークナイト』シリーズをほうふつさせて重厚感たっぷり。アクションやヒーローものとしてのカタルシスだけでなく、人間の心の闇や善と悪の曖昧な境界線に踏み込むドラマとしても見応えがありそうです。
近年は、DCと双璧をなすマーベルコミックスの映画化が大成功を収めており、テレビでも2013年マーベルの『アベンジャーズ』から派生した『エージェント・オブ・シールド』が始まりました。が、テレビではDCが健闘しており、The CWの『ARROW/アロー』のスピンオフで新番組『The Flash』も好発進。
『Gotham』は、裏番組に大人気番組『ビッグバン★セオリー』や『ザ・ヴォイス』などがある激戦区の時間帯とあって視聴率はやや低めですが、若者層に人気が高く、録画視聴率ではトップの伸び率を記録しています。テレビでも、アメコミブームはいよいよ本格化してきた感があります。
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●今月のオススメドラマ
『オリジナルズ』
ヴァンパイア、魔女、人狼の全面戦争が勃発
The CW(CWテレビジョンネットワーク)の大ヒットシリーズ『ヴァンパイア・ダイアリーズ』のスピンオフ番組。本家に登場する、1000年以上歴史を持つ最古で最強のヴァンパイア一族の"オリジナルズ"であるクラウスと、イライジャ、レベッカのマイケルソン兄妹3人にフォーカスしたスリラーだ。
ルイジアナ州ニューオーリンズの超自然現象が多発する町フレンチクォーターに、数百年前に町の設立に関わったオリジナルズが戻ってくる。マイケルソン兄妹の二番目の弟で、人狼とヴァンパイアのハイブリッドであるニクラウス(通称クラウス)は、自分たちに対して企てられている陰謀の謎を探るが、かつての弟子で現在は町を支配する極悪非道のヴァンパイア、マルセルが彼らの前に立ちはだかる。魔女や人狼、人間をも巻き込み、クラウスとマルセルの宿命の闘いは激しさを増していく。
本家シーズン4の第20話が、実質上のパイロット版の役割を果たしている。本家に比べると、アクションやバイオレンス描写など全体的にハードで、よりダークな作風となっている。映画『インモータルズ―神々の戦い―』のジョセフ・モーガンが、クラウス役で人気急上昇中。米国ではシーズン2が放送中だ。
映画&海外ドラマライター。女性誌、情報誌、ウェブ等に映画評やインタビュー等を寄稿。「BAILA バイラ」「eclat エクラ」「日経エンタテインメント!」映画サイト「シネマトゥデイ」などに連載中。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。
[日経エンタテインメント! 2014年12月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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