マネー研究所

税を知る

ビール文化をかき乱す、税とお酒の腐れ縁

2014/12/4

■発泡酒・第三のビールはガラパゴス商品

――今回の税制改正で話題のビール系飲料も、税に翻弄されてきましたよね。

日本ではビールの税負担が酒の中でも重く、国際的に見ても高水準です。アルコール度数がそれほど高いわけでもなく、大衆酒といってもいいようなビールがこうした扱いを受けているのは不思議だと思いませんか。

日本の酒税法は分類差等課税制度といって、酒の種類によって税率を分ける仕組みを採用しています。税率が一律だと所得の低い人ほど税負担が重くなる傾向があるので、高級酒に重い税、安い酒に軽い税を課すことでその問題を解消しようとしたわけです。

一般家庭に冷蔵庫が普及していなかった50年代、ビールは確かに舶来の高級酒で、富裕層が料理店で飲むものでした。その当時に決められた高い税率が、ビールがすっかり大衆化した現在も残っているのです。一方、同じく高級酒とされていたウイスキーについては、英国などに「実質的に焼酎の保護措置になっている」と批判されたため89年に税率が引き下げられ、結果的にビールだけが高いままという状態になっています。

――時代に合わない税率が生き続けているのはなぜですか。

ビールから得られる税収があまりに大きく、大蔵省(現・財務省)も税率を下げるに下げられなかったということでしょう。ビールの消費量は平成に入っても増え続け、酒税の税収の8割をビールが占めるまでになりました。値札には値段のうちいくらが酒税なのかは書かれていませんから、消費者の反発が高まることもありませんでしたしね。

不合理ともいえる高税率に対抗しようと、ビールメーカーが20年ほど前に開発したのが発泡酒です。麦芽比率を下げ、比率3分の2以上という酒税法のビールの定義を外れたので、「雑酒」として扱われ税率を低くできました。ビールに近い味なのに安いこの酒は大いに売れました。

これはビールの大衆化を象徴する出来事で、本来であればこれを機にビールの税率を下げるべきだったのですが、実際は逆でした。ビールの税率はそのままで、麦芽比率が50%以上の発泡酒はビールと同じ税率になったのです。まさに発泡酒を狙い撃ちにした法改正でした。

――メーカーの努力が無駄になってしまいますね。

メーカーはめげずにさらに麦芽比率を下げた商品を開発し、発泡酒の販売は伸びましたが、2003年にはこの区分の税率も引き上げられました。ついには麦芽以外の原料を使ったり、発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜたりしたいわゆる第三のビールが登場します。まさにいたちごっこです。

発泡酒や第三のビールの存在は「税が酒を造る」の最たるもので、日本の酒税法が生んだガラパゴス商品です。米欧でも蒸留酒、ビール、ワインといった分類ごとに税率が決められていますが、日本ほどいびつではありませんし、税とは独立した法律で製法や原料を定めている国もあります。

サッポロビールが販売していた第三のビールが、今年7月に発泡酒として再発売されるということがありましたよね。製造方法について国税当局から問い合わせを受けて、第三のビールとして認められない可能性が出てきたということですが、専門家集団であるメーカーがそんな指摘を受けるような線引きになっていること自体が問題です。

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