検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

がんの告知と「魔の2週間」 日ごろ冷静な人も別人に

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス
その言葉は、ある日不意に言い渡される――「がん」。耳にした瞬間、多くの人は「死」を初めて実感し、自分の「命」を改めて認識するようになるという。今や日本人のおよそ半分が、なんらかのがんにかかる時代。人生、家族、仕事……。がんをきっかけに診療室で繰り広げられる人間模様とともに、がん治療の最前線を歩み続ける森山紀之・東京ミッドタウンクリニック健診センター長が語る、現代人に伝えたい生き方の道しるべ。

たとえ早期のがんであっても人は必ず取り乱す

「がんの疑いがあります」という言葉を、みなさんだったらどう受け止めるでしょうか。

がんの早期発見に大きな力になっているのが健康診断、がん検診、人間ドックなどの検査です。検査によって早期に発見できたなら、それは喜ばしいことのはず。ところがなかなかそうもいかないのが人間というものなのです。

40代のあるご夫婦のケースです。ある晩、富永大祐さん(仮名)が帰宅すると、奥さんの優美さん(仮名)が真っ暗な部屋で泣いていました。聞けば、以前受けた婦人科検診の結果が出て、「ステージIII」だと言われた、と。インターネットで調べたら「がんが広がっている」「転移が見られる」と書いてあった。「私はがんだ、手遅れだ、もうダメだ」と、優美さんはわんわん泣きながら訴えたそうです。

大祐さんは日ごろ冷静で穏やかな妻の豹変(ひょうへん)ぶりにびっくりしたようです。ステージIIIは確かなのか、そもそも婦人科検診でがんの進行度までわかるのか。しごくまっとうな疑問を口にし、とにかく優美さんを落ち着かせようと「大丈夫、大丈夫」と笑顔を見せたのですが、取り乱している優美さんは聞く耳を持ちません。それどころか「こんなに深刻なのに、あなたは笑っているばかりで、ちっともわかってくれない」と、夫を責める始末……。

正しく認識していれば大泣きする必要はなかった

実はこの騒動、優美さんが細胞診の判定分類である「クラスIII」を、がんの進度を示す「ステージIII」と、取り違えたことが引き起こしたものでした。

よくあるケースなので簡単にまとめますと、細胞診の結果は、「クラス1=異形細胞がない」「クラスII=異形細胞は存在するが悪性でない」「クラスIII=悪性と疑わしい細胞が存在するが断定できない」「クラスIV=悪性細胞の可能性が高い」「クラスV=確実に悪性」の5つに分類されます。優美さんが検診を受けてわかった「クラスIII」とは、がんになるかどうかもわからないレベルで、大泣きする必要はまったくなかったのです。

がんの検査結果は誤解を招きやすい
がんになる前の状態を示す例
前がん病変(異形成)からがんに進展する可能性があるかどうかを、「クラス」として判定する検査がある。例えば、子宮頸部の「子宮頸部細胞診」では、その結果をクラス1~5として示し、「クラス1=正常」「クラス2=軽度異形成を疑う」「クラス3a=中度異形成を疑う」「クラス3b=高度異形成を疑う」「クラス4=早期がん(ステージ0)細胞を疑う」「クラス5=ステージIa以上のがん細胞を疑う」という判定がなされる。前がん病変(異形成)は、口腔(こうくう)、胃、子宮、皮膚、大腸、乳房などに起こり、放置しておくとがんに変わるリスクが高まる。
がんがある状態を示す例
がんの状態をステージ(=病期)0~IVの5段階で示す。ステージを判定する方法の一つに、国際対がん連合の「TNM分類」がある。「T因子=がん(Tumor)の大きさ」「N因子=周辺のリンパ節(Node)への転移の有無」「M因子=別の臓器への転移(Metastasis)の有無」に応じて、ステージ0~IVに分類される。ステージがIV期に進むにつれてがんが広がっている状態になる。がんの大きさとサイズ、転移の有無によって「IA」「IB」「IIA」「IIB」などと、さらにステージを細かく分類していく。

一方、「ステージ」はがんの進度の分類で、転移の有無などをもとにI~IV期に分かれています。先のケースで登場した「ステージIII」は、優美さんが集めた情報にもあったように、がんが進み、すでに「転移が見られる」といったやや深刻な状態です。

ここで何が言いたいのかというと、日ごろから冷静な人を別人に変えてしまうのが「がん」であるということなのです。そして、そんなときにこそ家族やパートナーなど、患者を取り巻く人の有りようが改めて問われるのです。

生存率が90%でも、「自分は助からない」と思い込む

がんは命に関わる病気ですから、告知をしたとき、「治るのか、治らないのか」「治せるのか、治せないのか」といった2つの結論が、患者さんとそのご家族にとっての最大の焦点となります。ところが、「早期がんだから、9割の人が助かっています」とお伝えしても、「いやいや自分は助からない方の1割になるに違いない」と考えてしまう人が非常に多いのです。

これは大変残念なことだと思います。というのも、「きっと死ぬんだ」と沈み込んでしまう人と、「自分は大丈夫だ」と希望を持って生きる人とは、その後の経過が全然違うといってもいいのです。医学をやっている人間として、科学的に説明のつかないものは信じたくないのですが、ストレスから解放されて前向きに過ごすことが、体に与える影響は計り知れません。患者本人のがんばりと、周りの温かいサポートによって、信じられないような出来事が起こることに幾度となく接してきました。その意味では、患者さんの思いを受け止め、寄り添えるご家族の存在もまた、この上ない力となります。

なかには、受診されたときにすでに末期で手の施しようがないケースもあります。こちらから伝えるにせよ、患者さんに「進行がんですか?」「助からないのですか?」と問われて答えるにせよ、告知の時は大変気を使います。そしてどんな心配りをして伝えたところで、ほとんどの方は「現状を正しく受け止める」ことができません。

告知の直後は、衝撃を受け、絶望したり、怒り出したり、がんであるはずがないと否認したり。その後は、不安、不眠、食欲不振など日常生活に支障をきたす症状に多くの人が悩まされることになります。私はこの期間を"魔の2週間"と呼んでいます。程度の差こそあれ、がんの告知を受けてから適応するまでにはそのくらいの時間がかかるものなのです。

「生きるか、死ぬか」の二択に目を向けない

ご家族には、「患者さんはものすごくわがままになります」と説明し、理解してもらえるように努めます。ですが、看病に疲れたパートナーに「おまえは俺が死ねばいいと思っているんだろう?」という投げやりな言葉をぶつけたりするのですから、ご家族はどれだけ苦しいことか。残念なことに、がんをきっかけに離婚をしたり、ご家族の絆が切れてしまったりするのは、場合によっては無理もないことなのかもしれません。

ですがその一方で、がんになったからこそ、それまで以上に支え合って生きていく見事なご夫婦を今までたくさん見てきましたし、闘病を通して家族の絆が強くなることもあります。

がんになるということは、本人にとってはもちろん、家族にとっても大変な災難です。ですから、今あるこの状況の中で、精神的にも肉体的にも最も軽いダメージで済ませるにはどうしたらよいかを考えていただきたいと思うのです。とにかく頭を切り替えて、「生きるか、死ぬか」といった二択の結論から目をそらすことが大切。日々の仕事や生活、自分の生きがいなどに集中したり、没頭したりするのでもいい。

少し不適切なたとえになるかもしれませんが、がんは交通事故や血管アクシデント(心筋梗塞、脳梗塞など)で突然死んでしまうことに比べれば、期限付きではあっても、というより、期限付きであるからこそ、残された時間を充実させる道が残されています。

「自分の命を後悔なくまっとうしてほしい」

どんなケースのがんであっても、私はこう祈るような思いで、日々患者さんやご家族に向き合っています。

(まとめ:平林理恵=ライター)

Profile 森山紀之(もりやま のりゆき)
東京ミッドタウンクリニック健診センター長、常務理事
1947年、和歌山県生まれ。千葉大学医学部卒。76年に国立がんセンター放射線診断部に入局。同センターのがん予防・検診研究センター長を経て、現職。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発に携わり、早期がんの発見に貢献。2005年に高松宮妃癌研究基金学術賞、07年に朝日がん大賞を受賞。主な著書に「がんはどこまで治せるか」(徳間書店)。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_