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有吉佐和子 女流の枠を超越した才気

ヒロインは強し(木内昇)

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NIKKEI STYLE

「これだから男は」と女性が呆れる場合、若い女子に鼻の下を伸ばした、といった内容が大半な気がする。が、「これだから女は」の場合、それは仕事上の失敗をあげつらう場面が圧倒的であるように思う。そもそも女に任せたのが過ちだった、と鬼の首を取ったように言うのである。ひとりのミスが働く女性すべてに荷担され、女が第一線で働くこと自体を否定するような妄言も時に飛び出す。

会社組織のみならず、文芸の世界もかつては男社会だった。今はまるで感じないが、女流作家というだけで色眼鏡で見られることも少なくなかったらしい。有吉佐和子が「地唄」で芥川賞候補になったのが昭和三十一年。翌年には有吉はじめ女流作家たちの目覚ましい活躍を指して、ご丁寧にも「才女の時代」と称されたことからも、その背景が透けて見えるというものである。

有吉佐和子は同人誌に小説を書いた弱冠二十三歳のときから卓抜した筆力を発揮した。芥川賞の選に漏れたのも、その作品が新人離れしていたからだとも言われる。「紀ノ川」「出雲の阿国」「恍惚の人」など話題作を次々に発表、私も読者としてその小説世界に魅了されたひとりだが、自分が物書きに転じた今、有吉作品の技倆レベルの高さに改めて驚かされている。

たびたび題材として用いた伝統芸能への造詣の深さ、歴史的事象を咀嚼して活写する筆力。多くの歴史小説が時代講釈と人間ドラマの綾で織られているとすれば、有吉作品は登場人物の目を通して万事を語らせてしまう。説明的にならず、無駄のない語句で情感と情景を過不足なく浮かび上がらせるのだ。これは大変高度な技巧で、並みの作家ではまず失敗に終わる。

「華岡青洲の妻」などはその好例だが、出版当初は重箱の隅をつつくような批判が出たという。どこをどう読んだのかと唖然とするが、歴史小説の定石を踏まねば認めない、という才の乏しさゆえ保守論を楯にする連中には、有吉の有り余る才気は理解不能だったのかもしれない。

地方公演に行った折、「よう、落選文士」と野次を飛ばされたこともあるという(大村彦次郎「文壇挽歌物語」)。「こっちの水は甘いぞ」とばかりに日和見と手の平返しを繰り返す編集者はきっと当時もいたはずだ。鋭敏な人ゆえ、周囲の存念を感じ取り傷つくこともあったろう。が、彼女は書くことをやめなかった。生来虚弱で、一作書き上げるごとに入院していたという。息を詰めて書くため、顔が真っ青になることもしばしばだった。けれど創作の支柱をゆるがせにせず、五十三歳で亡くなる日まで「自分の仕事」を厳しく、しかし楽しみながら貫いた。そうして「女流」という枠を取っ払った作品を数多く残した。

有吉佐和子歿後三十周年の今年、多くの作品が新装版となった。またご息女である作家・有吉玉青氏の「ソボちゃん いちばん好きな人のこと」にも当時のことが鮮やかに描かれている。是非手にとって頂きたい名著である。

[日本経済新聞朝刊女性面2014年11月29日付]

木内 昇(きうち・のぼり) 67年東京生まれ。作家。著書に「茗荷谷の猫」「漂砂のうたう」(直木賞)「笑い三年、泣き三月。」「ある男」など。

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