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古代祝祭劇「太陽の記憶――卑弥呼」 世界初演、和洋の歌舞音曲の粋を結集

2014/11/29

 西洋の管弦・打楽器と雅楽など日本の伝統楽器の奏者が一堂に会し、和洋混交のオーケストラが鳴り響く。仏教の声明(しょうみょう)が唱えられ、日本伝統の舞踊が登場する。そんな未曽有の古代祝祭劇「太陽の記憶――卑弥呼」が11月18日、サントリーホール(東京・港)で世界初演された。作曲と指揮は菅野由弘。演出は中村福助。和洋の歌舞音曲の粋を結集し、娯楽性も十分ある。日本発の新たな現代音楽の誕生だ。

和洋の楽器の奏者が一堂に会し、舞踊や僧侶の声明も入る古代祝祭劇「太陽の記憶――卑弥呼」の世界初演(11月18日、東京都港区のサントリーホール)=写真 池上 直哉、提供 サントリーホール

 「日本を元気にするお祭りをやりたい」。8月8日の公開リハーサルで作曲家の菅野はこう抱負を語っていた。その通り、盛大な古代祝祭劇となった。菅野は卑弥呼を太陽の化身として描き、皆既日食の下で人々が歌や踊りなど様々な芸を繰り広げ、太陽である卑弥呼を呼び戻す古代日本を夢想したという。そうした歌舞音曲を「日本の芸能=芸術の原点」と考え、「古代祝祭劇として今年初めから3カ月半かけて書き上げた」と言う。約100分の大作で、前半は「古事記」や「日本書紀」に基づく世界の開闢(かいびゃく)から水蛭子(ヒルコ)の誕生と葬送、黄泉(よみ)の国までが描かれる。後半は卑弥呼が黄泉の国からよみがえる形で新たに誕生し、日食で月に隠れ、また再び復活するまでを描く。

 管弦楽の編成は特異だ。「大谷さんをイメージして曲を書き進めた」と菅野が言うように、バイオリンの大谷康子が演奏家として卑弥呼役を演じる。大谷は客席から向かって左側、菅野が指揮する横に立ってソロを弾く。その後ろには三味線の常磐津文字兵衛、笙(しょう)の宮田まゆみ、琵琶の首藤久美子ら日本の伝統楽器の奏者が並ぶ。正面奥には箏(そう)の奏者が配置されている。右手を見渡すと、サントリーホール館長の堤剛を先頭にチェロ奏者がずらっと整列し、その奥にはコントラバス奏者もいる。和洋の様々な打楽器も使い、正面の高台にはパイプオルガン奏者もいるようだ。

 西洋の弦楽器では高音域のバイオリンが大谷1人だけで、あとは堤らチェロが7人ほど、コントラバスも4人いて、低音弦に偏った編成にみえる。「かつて中国から低音域の楽器も入ってきたが、日本人は低い音の出る楽器を好まなかった。このため日本の伝統楽器を集めると高音域に集中しがちになる。そこで西洋楽器のチェロやコントラバスで低音域を厚めにしてバランスをとった」と菅野は風変わりな管弦楽編成を説明する。

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