旅で成長するトラフグ 最後は生まれ故郷に回帰

正面から見るととぼけた愛嬌がある(東海大学海洋科学博物館提供)

ロサンゼルスの水族館で聞いた魚の講演会は、繁殖生態などのユーモアたっぷりな講師の話しぶりに笑いが絶えなかった。フグの話もあって、毒があるフグを日本では食用にしていて、年間10人ほどが中毒で死ぬという話に会場が沸いた。毒のある魚を、なぜ日本人はわざわざ食べたがるのかという雰囲気を感じて、複雑な気持ちになった。フグのおいしさを知らないのだろう。

怖いフグ毒、実は外部から取り込み

もっとも、フグ中毒で年間10人が死ぬというのは古い情報で、最近は5年間で1人だけだ。フグ毒は神経や骨格筋をまひさせる神経毒で、中毒になると、手足がまひして呼吸困難になり、ついには窒息死する。有効な直接の治療法や解毒剤はないが、人工呼吸器などで一定時間呼吸を維持すれば助かることが多いという。

フグはどうやってフグ毒(テトロドトキシン)を持つようになるのだろうか。昔はフグだけがフグ毒を持つと考えられていたが、40年ほど前に奄美大島のツムギハゼにもフグ毒が見つかり、その後、ヒトデやタコにもフグ毒を持つ種類が見つかった。

いろんな動物にフグ毒があるのは、それぞれの動物が毒をつくるのではなく、何かがつくった毒を食べてため込むのだろうと予測された。研究の結果、フグ自身にフグ毒をつくる能力はなく、海で普通に生活する細菌がつくった毒を他の動物が順々に食べ、つまり食物連鎖によってフグなどに蓄積されるということが分かった。

水揚げされるトラフグ。体を膨張させている(浜名湖学習館ウォット提供)

フグ毒が普通にいる海洋細菌によってつくられるのならば、なぜ特定の動物だけが毒を持つようになるのだろうか。フグ毒に対する魚の抵抗性を調べた東海大学の斎藤俊郎先生によると、イシダイなど一般の魚はフグ毒に対する抵抗性がほとんどなく、毒を食べると微量でも死ぬのに対して、毒フグはその300~700倍の強い抵抗性を持つという。つまり、フグ毒を持つ動物には、体内にフグ毒を蓄積する能力があるというわけだ。