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妻よ、家事能力の低い夫を叱らないで

武蔵大学社会学部助教・田中俊之さん

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NIKKEI STYLE

日経DUAL

ワーママにとって、夫が完璧な「イクメン」なら言うことはないですよね。だが夫は夫で、色々悩んでいることもある…。男性が抱える問題を研究する「男性学」が専門の武蔵大学社会学部助教の田中俊之さんに、日経DUAL編集部の荒井(共働き夫)とフリーライターの辛(ワーママ)が、DUAL世代の共働き夫が置かれている問題について聞いてきました。

働く男性だって、実はかなりしんどい

―― 初めに、田中さんが研究している「男性学」とはどのような学問なのか教えてください。

田中俊之さん(以下、田中):簡単に言えば、「男性が男性であるが故に抱えてしまう問題」を対象にした学問です。例えば、仕事関連では男性は定年まで働き続けるのが当たり前という前提があるせいで、それとは異なる生き方をしづらいことですね。

また長時間労働の問題もあります。例えば、長時間労働のために家事や育児に参加できないことですね、また、家事・育児に参加したらしたで直面するのが「平日・昼間問題」です。

―― 「平日・昼間問題」とは…。

田中:平日の昼間に、働く世代の男性が家事や育児のために外をうろうろしていると、それだけで周囲から変な目で見られてしまうという問題です。女性なら、そういう目で見られることはありません。

―― 女性の私が見ても「あの人は怪しそう」と感じることがありますね。なぜそう思ってしまうのでしょうか。

田中:女性には仕事を続ける場合と辞める場合があるのに、男性には「無い」からでしょう。社会から「男は仕事」と決め付けられていて、仕事中心以外の生き方がなかなか許容されていないのです。

男性は1つの仕事をずっと続けるのが普通だと考えられ、職を転々とするとイメージが悪いですよね。「無職」というイメージはもっと悪い。定年を迎えた人がラジオ番組に投書するとき、無職だと聞こえが良くないので「元○○」という書き方をすると聞いたことがあります。無職を周りが否定的に見るだけでなく、男性本人も否定的に捉えるのが問題です。

共働き夫の家事意欲は、なぜ低いのか

―― それでは、DUAL世代の男性がいま抱えている問題には、どんなものがありますか。

田中:まず、家事をうまくこなせない夫に妻がダメ出しをすると、夫はますます家事が嫌いになるという悪循環の問題ですね。

実はこうした状況が生まれるのには、社会的背景があります。例えば中学校で女子は家庭科の授業を必ず受けますが、男子が家庭科の授業を受けるようになったのは1993年からです。つまり35歳より上の男性は、家事の基礎となるべき家庭科の授業をきちんと受けていないのです。

―― 僕(荒井)は37歳ですが、確かに小学校では家庭科をした経験があったけど、中学校では技術を学んでいましたね…。

田中:それに親の世代はサラリーマンと専業主婦の組み合わせが多く、「男は仕事」「女は家庭」と役割分担がはっきりしていました。なので、共働きなら家事を分担して当然なのに、家事を自分ごとだと思えない男性がまだまだ多いように感じます。子どものころ「お母さんに台所に入ってはいけない」と言われて育った男性もいますから。

―― 母親の育て方もありますよね。なんでもやってあげるお母さんだと、何もしない子に育ってしまう。

田中:私もそうですが、専業主婦の母親に育てられた男性は、家事は「全自動」だと思ってしまうふしがあります。一人で暮らしてみたら、家事ってこんなに大変なんだと分かるんです。

―― ずばり、僕もそのコースです。子どものときは家事を全くせず、大学時代に一人暮らしをしてみて、家事を初めてまともにやりました。もし実家暮らしだったら、家事をしないままに結婚まで進んだな…。

田中:こうした社会的な背景から、日本の男性は女性より家事への意欲や能力が低いのは確かなので、それに対する支援はもっとあっていいと思います。

例えば、男性向けの料理教室が盛んになってきましたが、掃除教室とか皿洗い教室など、身の回りの家事を学ぶ教室も男性には必要なのではないでしょうか。

―― 一方、共働き家庭では、家事ができない夫に対して妻が家事を教えてあげるのは当たり前ですよね。だから妻のダメ出しを、ことさら問題視する必要はないのではありませんか。

田中:ですが、「女性が当たり前にやっていることなのに、どうして男性はできないの…」という意識でダメ出しするだけなら、そこでおしまいになってしまいます。例えば仕事では、新人に「そんなこともできないの!」と叱ったら、言われた新人は萎縮してしまいますよね。

夫が家事ができなくても、きつい言い方や上から目線での話ではなく、褒めてあげつつ、優しく仕事を教えるつもりで接するほうが良いと思います。男性が喜ぶ「さしすせそ」はご存じですか。

―― 知りません…。

田中:「さ」は「さすが」、「し」は「知らなかった、そんなやり方があるんだ」、「す」は「すごい」、「せ」は「先輩だから」、「そ」は「そうなんですか」。男女平等という観点からはどうかと思いますが、現実的には、女性が下手に出ると男性は喜んで受け入れてしまいます。

理想は「家事を平等に分担するのは当たり前なんだ」というところまで男性の意識を持っていきたいですが、現実的な戦略として、夫婦が家事をうまく分担するには上記のような手を使って褒めていくのは「あり」だと思います。

男の育児参加を妨げるのは、職場の「粘土層」

―― 田中さんが大学で若者を相手に教えていますが、昔と違うなと感じる点はありますか。

田中:「男の自分のほうが収入が高くないとイヤだ」という男子学生は減ってきていますね。ひと昔前の男性は身長、学歴、年齢も含めて、自分より下の立場の女性をありがたがっていましたが、今の大学生は、そうしたひと昔前の男のプライドより、現実をちゃんと見て対応しています。年上の世代は「最近の若い男性は弱くなっている」といいますが、私は違うと思います。

―― 若い世代では「男はこうあるべきだ」という意識が薄れてきたのでしょうか。

田中:まさにそうです。また実際は、1980年代後半から「仕事だけでなく家族との生活も大切にしたい」という意識を持つ男性が多数派を占めるなど、家庭より仕事を優先する古い男性イメージは年を経るごとに減ってきています。

ですが、問題は職場です。私も参加しているワーキンググループが行った調査によれば、家庭と仕事との両立に理解のない中高年男性が多い職場では、そこで働いている男性も「男は仕事、女は家庭」「子どもが3歳になるまでは母親が家にいたほうがいい」などという古い男性イメージを持つ傾向が強いのです。

今は育児・介護休業法が改正されて、制度的には男性も育児に参加しやすくなっています。ですが、実際に育休を取る男性が増えないのは、働いている会社の社風など、明文化されていない「企業風土」が足かせになっているからです。

―― 家庭を重視する人が増え、制度も整ってきたけれど、最後に問題になるのは「社風」なんですね。

田中:仕事と家庭との両立に理解を示さないいわゆる「粘土層」の人達が直属の上司だったら、育児をしたい男性にはつらいでしょうね。

―― そうした上司の理解が足りない職場で働く男性はどうしたらよいでしょうか。

田中:「粘土層」の人達はいずれ退職するので「いなくなるまで待てばいい」という考え方もあります。ですが、そうやって諦めてしまうのは、お互いにわびしいでしょう。

祖父になって孫の世話に積極的となる「イクジイ」という言葉ができたように、中高年男性も子育てに関わることの意味や価値に気付いてくれたら、それだけで社会に変化がありますよね。

中高年男性が良い悪いというより、仕事中心の時代から、男性も育児を分担する時代へと変わるのが早すぎたんです。私たちの世代でもついていくのが大変なんですから、年上の世代はもっと大変だと思います。中高年男性に助けてもらえることも多いので、諦めずに対話をする意識を持つほうが良いのではないでしょうか。

(文・構成 辛智恵、荒井優)

[日経DUAL2014年10月31日付の記事を基に再構成]

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