旅にジャズ、風景と音が紡ぐ贅沢なゆとり

新しいジャズの楽しみ方を提案する「Something Jazzy 女子のための新しいジャズガイド」の著者、島田奈央子さんによるジャズガイド。最近の話題やおすすめのアルバムを紹介します。

気が付けば今年もあと1カ月ちょっと。そろそろ、年末年始の帰省や旅行の準備を進めている方もおられるのではないでしょうか。楽しみではありますが、道路が渋滞したり、電車が混雑したりして、移動中はなかなか心に余裕を持てないと聞きます。それならいっそ、渋滞も混雑も覚悟して移動中にたっぷりと音楽を楽しんでみる、というのはいかがでしょうか。音楽に心を傾けて、窓からみえる景色を眺めれば、いつもと違う風景が見えてくるかもしれません。

JR九州の特急「A列車で行こう」のバーカウンター。往年のジャズの名ナンバーを冠した列車。16世紀の天草に伝わった南蛮文化をテーマにデザインされ、木やステンドグラスを配した落ち着いた色調の車内は大人の雰囲気が漂う

ジャズと列車というのは、実は古くからつながりがあります。前回のコラムでも触れましたが、ジャズのスタンダードには「A列車で行こう」(1939年作)という有名な曲があります。この「A列車」というのは、当時、ニューヨークのブルックリン東地区からハーレムを通ってマンハッタン北部を結んでいた「ニューヨーク市地下鉄A線(8番街急行)」のこと。「黒人ミュージシャン達がいるハーレムでジャズを楽しむなら、早くA番線に乗りなさい」という曲で、曲全体からワクワクする気持ちが伝わってきます。

特急列車にこだわりのBGM

日本のJR九州でもこの「A列車で行こう」という冠のついた、クラシカルで重厚なデザインの特急列車が人気を呼んでいます。BGMにもこだわり、キーボード奏者の向谷実氏が「A列車で行こう」をアレンジ。音楽と風景と内装の雰囲気から、大人の贅沢(ぜいたく)な時間が過ごせそうですね。

サックス奏者、ジョン・コルトレーンのアルバムには「ブルー・トレイン」(1957年)という名盤があります。ブルートレインといえば、日本でも長く愛されていた寝台列車の愛称。アルバムとは直接関係はないのですが、タイトル曲「ブルー・トレイン」で吹くコルトレーンの深く長いサックスの音色は、闇夜を走る寝台列車をイメージさせます。

ここ数年、“ジャズトレイン”という名の付いた、電鉄会社とコラボレーションした企画イベントが増えています。開催日のみ客席の一部をステージにし、列車に揺られながらジャズの生演奏を聴くことができます。車窓から見える景色を眺めながらなんて、なんだかとても贅沢。今年も宮城や静岡、宮崎、徳島など、全国で行われていました。11月21日には、川崎で開催中の国際的ジャズイベント「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン・イン・かわさき2014」に合わせて、京急電鉄が京急川崎駅のホームに車両を止めて1両をジャズの演奏会場に。