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気になる尿酸・プリン体 やっていいこと悪いこと 痛風・高尿酸血症を招かないために

2014/11/24

■1日2リットル以上の尿量を目安に水分を摂る

――尿酸を排せつしやすくするために、心がけることはありますか。

藤森 尿酸の排せつを促すためには、水分摂取が重要です。痛風は、腎臓と深いかかわりがあるからです。腎臓が尿酸を排せつする力を「尿酸クリアランス」と呼びますが、これは尿量と比例関係にあります。図2の通り、尿量が増えれば、尿酸もたくさん出ていきます。尿中の尿酸は、水を多く飲むほど薄くなりますから、腎臓の結石はできにくくなり、その意味では良い影響が期待できるでしょう。ところが、いくら水を飲んでも、一定のライン(★印)を超えると、尿酸を排せつする力は横ばいになり、それ以上は増えません。3リットル、4リットルの水を飲んでも効果は同じということです。

なお、学会のガイドラインでは1日2リットル以上の尿量を推奨しています。2リットル以上の尿量を確保するように、1日2~2.5リットルを目安に水分を摂れば、尿酸クリアランスが★印に達し、尿中の尿酸濃度も薄くなって尿路結石の形成も食い止めてくれます。

■患者さんが陥りやすい「よくある誤解」

――最近では、プリン体を抑えたビールが販売され、「これなら大丈夫」と愛飲している人がいます。実際のところ、高尿酸血症の予防に効果はあるのでしょうか。

藤森 情報に振り回されず、適切な方法で尿酸値を下げる取り組みをしてほしいですね(表1)。たとえば、「プリン体を抑えたビールだから、たくさん飲んでよい」と考えるのは間違いです。両者のアルコール度数が同じで、同じ量を飲むという前提なら、プリン体を多く含むビールより、少ない方が尿酸への影響は少ないかもしれません。

ちなみに、ビールなどの醸造酒は、焼酎をはじめとする蒸留酒よりも痛風を招きやすいというデータがありますが、ここにも落とし穴があります。「ビールが好きだけど、尿酸が気になるから焼酎に切り替えた」という声を聞いたことはありませんか? こうした場合、ビールをやめたという安心感のせいか、かえってアルコール自体の摂取量が増えることがあります。アルコール自体が、体の中で代謝されるときに尿酸の産生を助けたり、尿酸を排出しにくくしたりする働きを持っています。いずれにせよ、飲酒自体を控えめにすることが何より大切です。

表1 これって本当? 尿酸値を下げるための生活習慣
アルカリ化食品をとる酸性化に働く食物(肉類など)を食べると、尿は酸性に傾き、アルカリ性の食物(海藻、野菜など)を食べれば酸性に行きにくくなる。尿を中性に傾けるためには、食事でアルカリ化食品を補うと良い。アルカリ化食品はプリン体もあまり含まない上、低カロリーなのでダイエットにも向いている。
乳製品をとる乳製品を摂る人は痛風になりにくいというデータがある。脂肪分の少ない乳製品であれば良い。ただし、カロリーが高いタイプのチーズ等は避けたい。
果物をたくさん食べる果糖の摂りすぎは尿酸を上げる。果糖を含む清涼飲料水の飲みすぎは避けたい。ビタミンCは尿酸を下げるので、果物については議論が分かれる。オレンジジュースを多く飲む人が痛風傾向に該当するという調査もあれば、あまり関係ないとする調査もある。
コーヒーを飲むコーヒーをよく飲む人は、痛風を起こす危険性が半減することが明らかになっている。ただし、コーヒーが尿酸値を下げるとまでは確定していない。
激しい運動をする×激しい筋トレや全力疾走のような無酸素運動は、「乳酸」を増やし、尿酸の排せつを妨げるため不可である。ウオーキングやジョギングなどの有酸素運動がお勧め。
急激な食事制限をする×極度な食事制限をすると、体内にケトン体が発生し、同時に尿酸値も高まってしまう。安易にダイエットに励まない方がよい。

――先ほど「太っている人も痛風になりやすい」とお聞きしましたが、ダイエットについてはどのように指導されていますか。

藤森 まずは食事でカロリーを減らすことです。ただし、急激なダイエットは避けてください。過度に食事を制限すると、ブドウ糖の代わりに体脂肪がエネルギーとして使われるようになり、「ケトン体」という物質が生じます。血液中のケトン体濃度が高まると、尿酸をくみ上げて再吸収してしまうのです。安易に「早くやせよう」とは思わないことです。また、激しい筋肉トレーニングなどの無酸素運動を行うと、乳酸がたくさん産生され、尿酸の排出を妨げる(=尿酸値を上げる)といわれています。ウオーキングやランニングなどの有酸素運動がお勧めです。

肥満は万病の元です。糖尿病、動脈硬化など、さまざまな病気の引き金になることは間違いありません。穏やかな食事制限や運動で、徐々にやせることが一番です。

(文:田中美香=医療ライター・ジャーナリスト、編集協力:ソーシャライズ)

Profile 藤森 新(ふじもり しん)
帝京大学医学部付属病院病院長
1976年3月東京大学医学部医学科卒業。86年12月米国ミシガン大学研究員、88年4月 帝京大学医学部第二内科講師、同助教授を経て97年より内科教授。2014年4月より現職。日本内科学会評議員、認定医、日本痛風・核酸代謝学会理事、認定痛風医、日本成人病学会評議員、日本糖尿病学会、他。痛風治療のエキスパートであり、日本痛風・核酸代謝学会の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」の改訂委員の一人でもある。

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