英語学習はあれこれ考える前に始めてみる
会社に言われてイヤイヤやるなら、やらないほうがマシ
こんにちは、川合亮平です。
最近、寝る前に『The Tiger Who Came to Tea』(編集部注:日本語訳は『おちゃのじかんにきたとら』)を子どもに読み聞かせすることが多いです。今夏、ロンドンで舞台を見た後、初めて手に取った絵本です。英国で1968年に出版されて以来、今も読み継がれ、ずーっと人気を誇っている、子ども絵本のテッパン中のテッパン。読み聞かせしやすいし、とっても不思議な魅力がある本です。何回読んでも、親も子も全然飽きない。お薦めです。
さて、今回は大人の英語学習について書いてみます。ママ・パパ自身が英語学習をしている、あるいは興味がある方々のヒントになるような内容だと思いますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
僕は企業の英語研修にも関わっているのですが、その現場で、会社から(半)強制的に英語を学習するように言われている従業員の方からよく聞く声があります。
「そもそも、なぜ英語を学習しなければならないのか。今使わないし、今後使う予定もない。第一、興味がない。家事や子育てで忙しいのに、英語学習に時間を使うなんてもったいない」
至極もっともな意見だと思います。それに対する僕の意見はいくつかあるのですが、まず1つ目は「そう思うのであればやらないほうがまし」というものです。ある程度使えるレベルの英語を身に付ける過程においては、集中力と大量の時間を投資することが絶対、不可欠なんです。だから、ネガティブな気持ちのまま、例えば、週1回のレッスンにイヤイヤ参加しても、それはハッキリ言って時間の無駄だと思います。身もふたもない意見ですみませんが(笑)、これまで色々な学習者に関わってきた経験から、本当にそう思います。
「使わないからやらない」から「やってみると使うようになる」へ
しかし一方で、矛盾しているように思われるかもしれませんが、2つ目の僕の意見は、「でも、とにかくやってみる」です。
「今使わないし」「今後使う予定もない」「興味がない」、どれももっともな意見なのですが、逆転の発想で「とにかくやってみる」ことで、今後使うチャンスが生まれやすくなるし、興味が湧いてくる確率もやらないよりは確実に上がります。
僕の今の仕事・生活には英語が必要不可欠ですが、順番としては、何もないところから、まず1人で学習を始めました。そして英語力が付いてくるに従って、さまざまなチャンスが訪れました。「今後使う予定がある」から学習を始めたのではなく、学習を始めて継続することで、「使う予定」が結果として生まれたのです。
英語を使う機会がないから勉強しないのではなく、勉強することが英語を使う機会をつかむきっかけになる、ということです。
だから大人でも子どもでも英語学習をするときは、すぐに成果を求めたり役に立つか立たないかを今の状況で判断したりしてしまうのではなく、3~5年くらいの長いスパンで捉えるのが非常に大切だと思います。
少し背伸びして挑戦してみると、英語力は格段にアップする
では少し角度を変えて「英語力向上を望んでいて、英語に対する思いもポジティブだけど、本当に学習の時間が取れないんだ…」という方へ、1つのアイデアをシェアしてみます。
それは、自分の英語力より(少し)上の英語力を必要とする状況に飛び込む。
英語学習に割ける時間がないけれど、英語力をレベルアップしたいというワーママ&パパにとって、使える考え方です。ちなみに、僕は目下この考え方で、自分の英語力のレベルアップを日々図っています(はい、そうです、僕は今は全く勉強していません。だって、子どもと家事と仕事でいっぱいいっぱいで英語学習の時間なんてあるはずがない)。
このアプローチを僕は自分で勝手に(たぶん伝わらないと思いますが)、「ドラゴンボールの悟空方式」と呼んでいます。漫画『ドラゴンボール』の主人公・悟空って、強い敵と戦うたびに、自分もどんどん強くなっていくんです。実は、英語力も全くその通りだと、僕は自分の経験から断言できます。
英語学習は脳にもいい、という研究結果も
つまり、自分の今の英語レベルよりハードルの高い状況、僕の場合はある種の通訳や翻訳、インタビュー取材をあえて受けるのです。その仕事中(準備段階も含めて)は、相当集中して、ある意味、火事場の何とか力を出して乗り切るんです。そして乗り切ったとき、自分の英語力がレベルアップしているのを感じられるはずです。
世界を舞台にNGO(非政府組織)活動を展開している僕の友人は、「大きな国際会議で発表するたびに自分の英語力がパワーアップしているのを確かに感じる」と話していました。彼も小さい子どもがおり、仕事が忙しいので、英語学習には時間を使っていません。
英語学習に特別割ける時間はなくても、英語力をアップさせたいあなた、この考え方をぜひ検討・実践してみてください。
最後に、余談として、「なぜ英語を勉強するのか」という答えに対するもう1つの回答は、「脳にいいから」です。色々な研究結果があり、一概にはいえないのですが、おおむね、語学を学習することは頭にいいとされています。「バイリンガルは認知症の発症が平均4年半遅くなる」というような研究結果も出ているようです。
いずれにせよ、英語力向上のキーは、大人も子どもも「集中力」と「時間」だと思っています。川合亮平でした。
「英国」と「イギリス英語」をキーワードに、通訳者、翻訳者、インタビュアー、ライター、コーディネーター、企業研修講師として、東京とロンドンをベースに活動するフリーランサー。三児の父(子どもは現在、ほぼ日英バイリンガル)。元英語落ちこぼれ。20歳から日本で英語独習を開始。現在は公私で英語を使用し、たまにイギリス人と間違われることもある。肩書は多岐に及ぶが、本人は「お父さん」と呼ばれるのが一番しっくりくると思っている。
【公式ブログ】「イギリス英語LIFE」http://ryohei-kawai-uk.net/wp/
[日経DUAL 2014年11月13日付の記事を基に再構成]
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