
中学受験をするなら、今や塾通いは必須です。
中には「うちは通信教育だけで受験をした」という家庭もありますが、それは私立中学受験の経験を持つ親が、塾の指導に匹敵するくらいの熱心さと丁寧さで、子どもの勉強を見てあげられたとか、あるいは子どもが勉強しなくてもよくできるある種の秀才だった場合など、ごくまれなケース。正直あまり参考にはなりません。
では、なぜ中学受験には塾が必要なのでしょうか? 例えば、同じ受験でも、高校受験と大学受験は学校の延長線上に入試があるため、学校で学ぶ勉強と入試問題の内容が大きくかけ離れてはいません。ですから、学校で学ぶ内容を地道にコツコツと勉強していれば、塾へ通わなくても合格することが可能です。
ところが、中学受験に限っては、小学生が習うべき学習範囲内の内容と定められているにもかかわらず、小学校で勉強する内容とは大きくかけ離れている面があり、学校の勉強だけではとても入試に対応できないのが現状です。
小学校での授業というのは、「一つのことを実行すれば答えが出る」という非常に単純な作業のくり返しで、いわば基礎訓練のようなもの。
こうした基礎訓練はもちろん大切ですが、中学受験の入試問題は、それをさらに発展させた問題が出題されます。例えば、算数の問題には数学の発想とは異なる「中学受験の算数」が必要になり、それを学校で習っていない子どもはとても解くことができません。また、親自身が中学受験を経験していないと、教えることも難しいでしょう。
「中学受験をするのなら、大手受験塾に通わせるのがいいでしょう」
そう口をそろえて言うのは、「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」というサイトで各塾の特徴や傾向、勉強への対策をアドバイスしている西村則康先生と中学受験個別指導塾SS-1代表の小川大介先生です。お二人は大手受験塾に通う生徒を中心に、フォローアップから応用・発展まで、集団塾では補いきれないものを、西村先生は家庭教師、小川先生は個別指導塾というスタイルで指導しています。
そんなお二人が「中学受験をするなら、まずは大手塾へ」と言うのには理由があります。
大手塾には受験に必要な学習カリキュラムがある
西村先生は言います。

「それは、大手塾は受験に必要な学習カリキュラムをしっかり作っているからです。また、多くの学校の入試問題の傾向と対策のノウハウを蓄積しているのも大きな強みです」
「一般的に中学受験の準備が始まるのは、小学3年生の2月から。大手受験塾の中学受験コースのスタートがその時期だからです。そこから入試本番までの3年間、各塾では中学受験のためのカリキュラムを用意しています」
「例えば各学年、平日用のものだけでなく、土日特訓用、夏休み特訓用、志望校別特訓用など、いつ何を勉強するかという学習スケジュールがしっかりと組み込まれており、それに沿って学習をしていけば、モレがなく、効率的・効果的に勉強を進めることができるようになっています」
「また、大手塾は、中学受験のためのテキストやテストの作成もしており、そのための研究にも力を入れているため、常に最新の入試の動向を把握しています。また、一般にはあまり知られていませんが、学校とのパイプも強く、塾で学ぶことが受験生にとって有利に働く場合もあります」
こんなに違う大手中学受験塾の中身
「SAPIX」「日能研」「四谷大塚」「早稲田アカデミー」など、駅前に競い合うように並ぶ大手塾の看板。駅から近く通わせるには便利そうですが、大手塾ならどこへ入れても同じなのでしょうか?
「いいえ、そんなことはありません。ひとくちに大手塾といってもその中身は様々で、それぞれに特色があります。また、先ほど、中学受験には大手塾がお薦めと言いましたが、大手塾にさえ通わせていれば合格は確実というわけでもありません。確かに大手塾のカリキュラムは受験には有効ですが、それはお子さんにとってその塾のやり方や環境がマッチしていた場合であり、逆にミスマッチだった場合は、その効果が表れないだけでなく、塾が原因で勉強嫌いにさせてしまう恐れもあります」(小川先生)
では、各大手塾にはどんな特徴があるのでしょうか? 首都圏の大手4塾のそれぞれの特徴を西村先生と小川先生に聞いてみました。