「捨てられない」 収集癖は男の悲しい習性
そのうち売りに出す
夫の部屋の隅に段ボール箱が数箱あった。結婚したとき夫が持ってきた荷物だ。長年放置され夫も存在を忘れていたようだが、先日ふと気になって開けてみた。すると漫画の単行本が出るわ、出るわ。100冊以上はありそうだ。
「ここにあったのか。中学生のころから集めていたんだよ」。あしたのジョー、キャプテン、ブラック・ジャック、北斗の拳、はじめの一歩……。夫はニコニコして本棚に漫画を並べる。え、捨てないの? あなた40代半ばだよ。
夫は「捨てられない。男の生き方のバイブル、心の糧だ」と言い切り「入りきらない。漫画用の本棚を買わなきゃ」。どこにそんなお金があるの。狭い家のどこに漫画専用の本棚を置くの。
夫のこんな悪癖は、息子にも遺伝している。たんすを開けたら、2年前に流行したキャラクターのカードが30枚ほど出てきた。捨てようとすると、息子は悲鳴をあげて阻止する。家の中が雑然としているのは、うちのオトコたちがモノをため込むからだ。
とはいえ、こんな収集癖で成り立つ中古市場もある。誰かが「お宝」として買ってくれるかも。そのうちこっそり売りに出そう。夫の漫画本と息子のカードで稼ぐ日を想像したら怒りが少し収まった。
そりゃ何とかしたいが
買い込んだ新刊コミックやCD、中古店を回ってやっとみつけた廃盤レコード……。対象が何にせよ、収集癖は男の性(さが)と言えばうなずく諸氏は多いだろう。小学生の息子はミニカーや昆虫フィギュアのコレクションが宝物なのだから、これはきっと世代、年齢を問わない習性だ。
最近とりわけ肩身が狭いのが、家族共有のハードディスクレコーダーに残るテレビ番組だ。ドラマやドキュメンタリーなど、いちど見終えた番組は消してと整頓好きの妻は言う。「目当ての番組が探しづらいから」。でも気に入った回は後でじっくり見直したいし、仕事のヒントが隠されている可能性もなくはない。
DVDやブルーレイに移せばいいじゃない、との指摘はもっとも。だけどそこまで手間を掛けて残すほどでは、という思いもまたあるんだな。ディスク容量はテラバイト級だから、とりあえず置いておくというのはダメかな。
カタチのあるなしにかかわらず、サブカルチャー分野は「断捨離」(だんしゃり)の標的になりやすいのかもしれない。女性の靴やバッグはもちろんのこと、上の世代の盆栽や切手なら立派な大人の趣味として認められただろうに。仕方ないから、あと1回だけ見て消そうかなあ。
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