アート&レビュー

舞台・演劇

ミュージカル「SINGIN’IN THE RAIN ~雨に唄えば~」

2014/11/14

「アダム・クーパーって、あんなに歌がうまかったのね、びっくり」。ミュージカル好きのMちゃんが顔を紅潮させている。「シーギニン・ザ・レイン……」と珍しく陽気に口ずさんでいた、すれからしのシターゴーアー(S)は怒られた。「話、聞いているの? それに音程狂ってるわよ」

S ごめんごめん。つい余韻に浸ってしまって。それにしても主演のアダム・クーパーに、またもサプライズだなあ。ダンサーとしては折り紙つきだけど、歌も演技もいけるんだから。

M 本当にね。マシュー・ボーンの振り付けた「白鳥の湖」でみせた迫力のダンスがすごかっただけに、芝居がこんなに達者とは思ってもみなかった。あの白鳥の肉体、激しい息は忘れられないけれど、今日見たら、どこから見てもミュージカル・スター。

S 伝説になったあの「白鳥の湖」は、男性的な力強いダンスが名作からまったく新しい魅力を引き出していた。ダンサーによる創造といえる舞台だったね。今日も圧巻はやはりダンスシーン。あの極めつきの名画で、ジーン・ケリーが雨の中で軽快に踊るシーンがあまりにも見事だったから、舞台でどうするかと思ったら……

M 豪雨だったわね。

S 蜷川幸雄がよくやる手法だけど、役者泣かせ。ずぶぬれになって動きにくいし、声は客席に届きにくいし、床がすべるから危ない。蜷川演出では、身動きのとれない人間の絶望を象徴することが多い。実際、そうそう動けるもんじゃない。なのに、今日は大柄のアダム・クーパーが舞台全面を使って豪快に踊りまくるんだから。

M 床は特別にスノコ状になっていて滑りにくくなっているらしいわ。上から降るだけでなく下からも水が出て、あっという間に水たまりができる。それをバシャバシャやって、恋が実ったうれしさを全開にしちゃう。映画の情感もいいけど、舞台だと生々しい肉体の躍動と強烈な水しぶきが別世界にワープする人間を思わせたわ。でも、ちょっと太ったかしら。

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