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河村尚子、ギルトブルグ、ピエモンテージ来日公演 冷戦後の世界が育んだ開かれた感性

2014/11/13

1980年代前半生まれの成長著しい世界的ピアニストが今秋、日本で相次ぎ注目の公演を開いた。ドイツ在住の河村尚子、イスラエルのボリス・ギルトブルグ、スイスのフランチェスコ・ピエモンテージの3人。いずれも東西冷戦終結後の開かれた世界でピアノを習い、国際コンクールで優勝・入賞し、グローバルに活躍しているという共通項を持つ。河村のショパンをはじめ、30代前半の旬の3人の演奏を聴いた。

日本デビュー10周年、ドイツ在住のピアニスト、河村尚子(11月9日、相模原市の杜のホールはしもと)

河村は今秋で日本デビュー10周年。日本人ピアニストなのに「日本デビュー」とは妙な言い方かもしれない。「5歳からドイツに住んでもう25年以上になる。今後も演奏活動の拠点はドイツ」と話す。父の赴任に伴って幼少時を日本人駐在員の多いデュッセルドルフで過ごした。14歳から大学都市のゲッティンゲンに移る。4年後、ハノーファー国立音楽芸術大学に入学し、同地で13年暮らした。在学中に難関のミュンヘン国際コンクールで2位。さらにクララ・ハスキル国際コンクールでは優勝し、一躍世界の注目を浴びる。2年前からミュンヘンに住み、今年1児を授かった。

「日本には年3回帰国し、2カ月ほど滞在して演奏活動をしている」。従来の日本人ピアニストは国内の教育システムの中で練習し、留学や国際コンクールを通じて欧米に打って出るというパターンだった。河村の場合はその逆だ。やはりドイツ在住の小菅優もそうだが、クラシック音楽の故郷である欧州で育ち、本場の技術を習得し、日本を含む世界各地で活躍している。冷戦終結後、欧州連合(EU)という開かれた西洋社会の中でのびのびとピアノを習った世代といえる。

ショパンを弾く河村尚子(11月9日、杜のホールはしもと)

そんな新しいタイプのピアニストである河村が「日本デビュー10周年記念」として始めたのが「ショパン・プロジェクト」。2016年春まで水戸芸術館(水戸市)でショパンの作品だけを4回に分けて演奏する。第1回を11月8日に開き、ショパンのバラードとノクターンを中心に弾いた。15年3月11日の第2回ではショパンの「ピアノ協奏曲第2番」をクァルテット・エクセルシオと室内楽版で協演する。「日本デビュー公演で弾いた曲。ロシア人の恩師ウラディーミル・クライネフの十八番(おはこ)でした」と話す。ハノーファーでロシア人の名伯楽に師事したのも冷戦後第1世代らしい。15年3月13日には東京オペラシティコンサートホール(東京・新宿)でも10周年公演を開き、ラフマニノフやプロコフィエフらロシア音楽も披露する。

11月9日、相模原市の「杜のホールはしもと」で水戸と全く同じプログラムの「河村尚子ピアノ・リサイタル」があり、これを聴いた。ショパンの最高傑作ともいえるバラード全4曲が演目に入っているが、河村独自の曲の組み合わせと順番になっている。演奏会の前半と後半とも「ノクターン~バラード~それ以外の曲~ノクターン~バラード」という「ABCAB」のシンメトリー構造風の並べ方だ。

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