GPIFが政府系ファンドになる日(安東泰志)ニューホライズン キャピタル会長兼社長

2014/11/16

カリスマの直言

「GPIFが日本企業の経営改革を促すこともあり得るのではないか」

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、日銀の追加金融緩和と同日の10月31日、新たな資産構成の目安を発表した。内容は事前にある程度予想されていた範囲のものであり、サプライズはなかったが、今後のGPIFの改革は、一般的に考えられているよりも大胆に進展していく可能性があることに留意が必要だ。

株・債券半分ずつ、国内6割・海外4割

前回も書いたように、GPIFの改革は、資産構成(ポートフォリオ)の見直しと、ガバナンスの見直しに大別される。

まず、資産構成の見直しについては、GPIF運用委員会に設置された検討作業班がリスクとリターンの計算を踏まえた複数の案を用意し、三谷隆博理事長、塩崎恭久厚生労働相の認可を得て今回の発表に至ったものだ。運用委員会の委員は8名で、過去半年で7名が入れ替わった。特に、委員長に就任した米沢康博・早大教授と、委員長代理の堀江貞之・野村総合研究所上席研究員は、昨年11月にGPIF改革についての報告書を提出した有識者会議の主力メンバーだ。その有識者会議の報告書では、デフレからインフレ環境への移行に伴い、金利リスクのある国内債中心の運用を見直すことが提言されていたので、運用委員会は当然、同じ方向にかじを切った。すなわち、今までは6割を占めていた国内債券の比率を大幅に下げ、「債券と株式を半分ずつ」「国内資産は6割、海外資産は4割」とされた。

11月1日付日経朝刊「年金、積極運用に転換」で掲載

さらに、最近運用委員に加わった英投資会社コラーキャピタルの水野弘道氏はPE(プライベート・エクイティ=未公開株式)に造詣が深い。今回の見直しでは、いわゆる「代替投資」(株や債券など伝統的資産ではなく、PE・インフラ・不動産などの資産)についても資産全体の5%までを配分できることになった。特に、海外の公的年金ではPEへの相当割合の配分は常識であり、GPIFはようやく重い腰を上げたことになる。

ガバナンス体制を強化

資産構成変更の発表に先立つ10月29日、厚生労働省は、GPIFの組織改革の検討作業班を立ち上げると発表し、11月4日に初会合が開催された。また、10月31日の資産構成変更に際しては、GPIFの運用委員会から、理事長に対して、(1)内部統制を強化するために運用委員会の下にガバナンス会議を設置し、また、コンプライアンス担当者を配すること(2)リスク管理体制を強化すること(3)専門人材を強化すること、などを趣旨とするガバナンス体制の強化について建議があったことも明らかにされている。

GPIFが運用を多様化するためには、その運用能力を格段に高める必要があるのは当然だ。現在のGPIFは、わずか80人の職員が約130兆円もの資産を運用しており、決裁権限は三谷理事長1人である。そして、理事長は所管の厚生労働省の影響を受けやすいといわれている。これでは、多様性のある運用はできないし、国民への説明責任も負えるはずがない。運用委員会の建議は理にかなったものといえるだろう。

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あってはならぬGPIF運用への政治介入