寝不足の金利は悪徳業者並み 眠気に打ち勝つ力(3)

2014/12/2
ナショナルジオグラフィック日本版

「寝だめ」――よく使われる言葉だが、正確には貯金ではなく平日にため込んだ睡眠不足の借金返済である。借金をしているという認識があればまだしも、「ツケで飲めるなじみの店から送られてきた月末の請求書を見てビックリ」「リボ払いが重なって気付いたら返済不能」みたいな、ひそかに膨れあがる借金型の睡眠不足が多いので要注意である。そこで「眠気に打ち勝つ力」の第3回として、知らず知らずのうちに危うい状態にまで蓄積してしまう睡眠不足の実態についてご紹介する。

ここで第1の質問。

「あなたは毎日十分に満ち足りた睡眠時間を確保できていますか」「自然な目覚めで朝を迎えていますか」

この問いに「イエス」と答えたあなたは、今回の話は気楽に読み飛ばしていただいて結構です。しかし読者の多くは「少し寝足りない」日々を過ごしているのではないだろうか。睡眠不足でバタンキューというほどではないが、できればもう1時間、せめて30分寝たい、でも遅刻はマズイからはうようにして寝床から出て出勤…。

そんなあなたに第2の質問。

「少し寝足りないことで、日々の生活に支障が出ていますか」

睡眠不足にもイロイロある。徹夜の影響は分かりやすい。眠気が強くて会議で居眠りをしてしまった、イライラして部下に辛く当たってしまった、逆に少しハイになりオヤジギャグを口走って後悔した、などといった経験をお持ちの方も多いだろう。

もちろん徹夜明けは危険がいっぱいなのだが、「一睡もしていない」という危機感があるため運転も含めてむちゃはしないのが普通だ。

かたや、普段の生活でもしばしば経験する「少し寝足りない」についてはどうだろう。「起きるのは大変だけど、いったん職場に出るとそれなりに仕事はこなせている」「徹夜はマズいけど、6時間くらい寝ていれば何とかなる」――。ついつい軽視しがちだが、さほど問題ない、眠くなければ大丈夫、などという判断は非常に危険であることが数多くの研究から明らかにされている。

(イラスト:三島由美子、以下同)
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睡眠不足の「金利」は悪徳業者並み