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不動産リポート

住宅購入、価格交渉はどのタイミングでできる? 不動産コンサルタント・長嶋修

2014/11/12

いうまでもなく住宅の価格は「需要と供給」で決まる。新築でも中古でも、引き合い(需要)が強く、値引きをしなくても売れるものはそのままの価格で流通していく。最近では一部都心マンションなどにおいて、いわゆる「買い上がり」も散見される。

■売りに出ている金額より高い金額の提示も

人気が高い一部の都心マンションでは「買い上がり」も散見される

買い上がりとは、例えば5000万円で売りに出ている中古マンションに対し、一番手のAが満額で買い付け申し込みをした後、それを覆すためにBが5000万円より高い額で購入すると意思表示をすること。売りに出した後、程なく買い手がついたものの、引き合いが強いと見て、いったん売却を中止した後に、以前より高い価格で再度売りに出すというパターンもある。一方で、値引きをしないと売れないもの、つまり需要の少ないものは買ってくれる人が現れる水準まで値引きをするしかない。

不動産会社などが分譲する新築住宅の場合、その会社が決算期を迎えている場合などは、契約や引き渡しをなんとか決算に間に合わせたいなどの理由で早期売却を目指し、利益が減少することを覚悟で大幅な値引き販売を敢行することがままある。

■景気が悪化すると1000万円引きも当たり前

また景気が悪化し株式市場が不調に陥り、住宅の売れ行きが極端に落ちた場合などに、在庫として抱える体力のない会社は仕方なく大幅な値引きをして手放す。1990年代後半、消費増税に山一ショックなどのイベントが重なった当時は、新築マンションや一戸建てで500万円引き、1000万円引きは当たり前といった事例があちこちに見られた。リーマン・ショック後にも同じようなことがあった。

個人が売り主の場合は、まさにケース・バイ・ケース。3000万円の中古住宅が10軒売りに出されている場合、それぞれの売り主の事情や思惑は千差万別だ。とある売り主は「特に売り急いでいるわけではないから1円も引かない」と考えているかもしれない。またある売り主は「1カ月で売れなかったら大幅に価格を下げよう」と考えているかもしれない。「とりあえず3000万円で売りに出しているが、ある程度は値引き交渉には応じよう」と考えている売り主もいるだろう。

先に住み替え先のマンションを契約してしまい、今月中に売れなければ、住み替え先に払う資金が手当てできず、業者買い取り価格で買い取られるしかないといった事情を抱えているかもしれない。不動産業者の買い取り価格は一般的に、市場価格の60~70%程度が相場なので、かなり安い価格で売却することになってしまう。

■価格交渉できるのは申し込み後

販売価格、売りに出されている価格はあくまでも「売り主の提示価格」にすぎない。価格交渉の余地があるのかどうか、すぐにでも知りたいと考えるかもしれないが、売り主が提示した価格に対して、買い主が「買付証明書」「購入申込書」などの書面で「いくらで買いたい」と意思表示をした段階で、初めて双方の提示額が同じ土俵に乗り、交渉が始まるのだと考えよう。

前述した書面の提示は契約前の交渉のために利用されるもので、道義上の問題は残るが、契約前なら引き返すことは可能である。こうした書面はあくまで購入の意思表示であり安易に提出するものではないが、正式な申し込みをして初めて、値引きの可否や売り主の要望などがわかり、価格交渉ができるのだ。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusho.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会(http://www.jshi.org/)を設立し、初代理事長に就任。『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)『「マイホームの常識」にだまされるな!』(朝日新聞出版)『これから3年 不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

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