40、50代の働く女性にとって合わない靴は悩みの種。颯爽(さっそう)とヒール靴を履きこなしたくても、既製靴では筋力が衰えた足に対応できるものが見つからず、痛さを我慢するか、あきらめてローヒールにするか、の2者選択を迫られている人が多い。
その点、3D計測をして、足や足裏の形にぴったりフィットするインソールで弱った筋肉を支えてくれる靴なら、ヒールが高めでも疲れや痛みを感じにくくなる。
実際、オトハルプロジェクトが、働く40、50代の女性を集めてKiBERAの靴の試し履きの会を行ったところ、それまでハイヒールをあきらめていた女性たちの中から「9センチヒールでも足が安定する」といった驚きの声が上がり、「これまでのパンプスと履き心地が違う」といった声も多く聞かれた。
7センチ以上のヒールを履いた経験はなく、現在はもっぱらローヒールを愛用する筆者(バブル更年期世代)も試してみた。初体験のKiBERAの9センチヒールは、意外なほど立った時に安定感があり、包み込むようなフィット感にも驚いた。同時に鏡に映った自分の姿を見て「足が長く見え、姿勢もより美しく見える」という、ヒール靴のキレイの方程式を再認識。久しぶりのワクワク感に、もう一度、高めのヒール靴に挑戦してみようか、という気持ちになった。
「46歳であきらめたら、その先のファッションの楽しみも狭まってしまう。どんな年齢の女性も、素敵でありたい気持ちは持っている。加齢で足の形が変わり、合った靴を履かないと健康も害する原因になることも含めて理解してもらい、足に合った靴を体験してもらうことが必要。それで価値を認めてくれたら、ヘビーユーザーになってくれるばかりか、友人だけでなく娘や自分の親も店に連れてきてくれる巻き込み力がある」と福谷社長。福谷社長は「納得」したバブル更年期キャリア世代のそうした行動力をすでに数多く目の当たりにしているという。「この市場がきちんと開拓できれば、この世代の売り上げだけで、今の売り上げの1.5倍以上になる」と福谷社長は予測する。
バブル更年期キャリア市場はポテンシャルが高い。だが、企業もそして当の消費者自身も、更年期が引き起こす心身の変化について理解が十分とはいえず、研究もまだ少ない。市場を堀り起こすためにはまず、「この世代の心身の変化を学ぶこと」が出発点。そして、その変化に伴う不調や不快感、あきらめの原因を探り、それを補う「解」を提供すれば、この世代は必ず周囲を巻き込みながら前向きのアクションを起こしてくれる。彼女たちはお宝世代なのだ。

日経BPヒット総合研究所主任研究員。日経BP社ビズライフ局プロデューサー。サンケイリビング新聞社を経て、90年、日経BP社入社。『日経レストラン』『日経ベンチャー』などの記者を経て、2000年より『日経ヘルス』編集部。その後『日経ヘルスプルミエ』編集部 編集委員など。女性の健康、予防分野の中で、主に女性医療分野を中心に取材活動を行う。