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更年期女性はお宝世代 「オトナ思春期」の購買力

日経BPヒット総研 黒住紗織

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NIKKEI STYLE

 エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。今を象徴するキーワードから、話題の理由、面白いワケなど、「ひみつ」を明らかにします。今回のヒットワードは「更年期女性向けの服飾需要」。約1200万人の女性が更年期を迎えている日本。この魅力的なマーケットを獲得しようと服飾メーカーが動き出しています。

いま更年期を迎えている45~59歳の女性の多くは男女雇用機会均等法の第一世代。仕事でキャリアを積み、少子高齢化を背景にこの先も長く社会との接点をもち続けることを期待されている。ここでは、仮にこの女性層を「バブル更年期キャリア世代」と呼ぼう。

厚生労働省の統計では45~49歳女性の75.7%は働いており、いまや、定年まで女性も働き続けることが当たり前になってきている。こうなると、女性ホルモンの低下による更年期の心身の不快感や不調を抱えていても、次のステップにあたる体調の安定期(老年期)までの期間をいかに快適に、かつ社会性も保ちながら乗り越えるか、が彼女たちの課題となる。

たとえば、ブラジャーやショーツ、肌着などの下着。更年期世代の体の変化とそれに伴う女性のニーズにいち早く気づき、売り上げを伸ばしているのがグンゼだ。

更年期は女性ホルモン低下の影響で体型が変わりやすく、肌も敏感になり、ちょっとした刺激にもかゆみやチクチクを感じるようになる。だが働き続ける以上、ノーブラというわけにはいかず、かといって体に合わないものを長時間身に着けるのもつらい。

グンゼは2012年、更年期を「オトナ思春期(第二の思春期の意味)」と命名し、この世代向けのインナーウエアブランド「KIREILABO(キレイラボ)」をリニューアル発売。12年は売上金額ベースで前年比30%、13年は10%と2桁増を維持、本年は前年比50%増を見込む。

消費者自身も自分の体に起きる変化を知らない

実はキレイラボ自体は08年から立ち上がっていたブランドだが、更年期の肌の変化に着目し、リニューアルしたのが12年。リニューアルでは、肌に刺激を与えにくい綿100%で、縫い目のない完全無縫製、商品タグも排除し情報は製品裏面に印刷、ブラジャーではワイヤーをなくして脇や肩は細い紐で締め付けず、面で支える、など徹底的な「肌への刺激や強い締め付けの排除」を行った。

08年当時の製品は、対象はエイジング世代としたものの、従来の若い女性用の補正下着(下着で体のラインの崩れを補正する)の考え方で開発したものだった。すると、「40代女性からのクレームがなぜか多かった」(グンゼ アパレルカンパニー インナーウエア事業部 MD本部部長 後藤直子さん)という。

調べてみると、サイズも素材も変えていないのに「チクチクする」「前と同じサイズを買ったのに、きつく感じる」といった声が多く、同社は「40代女性は更年期を背景に肌が変化し、感受性が強くなる」ことを突き止めたのだ。そこで、更年期世代が着心地よく、かつ、ボディラインの衰えもある程度受容しながらも、あきらめなくてもいい下着の開発という目標を掲げ、新しく「オトナ思春期」向けのキレイラボが誕生したわけだ。

キレイラボはレースなどの装飾などもなく、シンプル。そのため「当初は男性営業マンや売り込み先のバイヤーから、かわいくないと評判がよくなかった。でも、まる2年たった今、女性たちの好反応を背景に、そうした声は聞かれなくなってきている」と後藤さん。「これまでの下着はメリハリのある若い女性のボディラインを評価する男性視点で作られてきた。女性が男性社会の価値観に自分たちを合わせてきたのがこれまでだとすると、これからはそれとは違うモノづくりが必要な時代」と後藤さんは力を込める。

バブル更年期キャリア世代をターゲットにするメリットはもう1つある。今の更年期世代は、バブル好景気時代に海外高級ブランド品の洗礼を受け、美容や旅行、ファッショントレンドを引っ張って来た、「消費トレンド」のリーダー世代。納得できるいいものに出会えば消費に躊躇(ちゅうちょ)はなく、可処分所得は他世代に比べて高い。

自らもバブル更年期世代の後藤さんは、「私たちは、その上の世代のように貯蓄するより遊びが好きだし、いいと思ったら消費する。使った分はどうにか自分で稼げるわ、という根拠のない自信がある。物を見る目は厳しい側面があり、商品開発という視点からは扱いにくい世代だけれど、ほかより可処分所得が高い世代との実感もある」と話す。

博報堂コンサルティング局の橋本直彦さんも「この世代は団塊と団塊ジュニアに挟まれて目立たないが、マーケティング上は重要なターゲット」という。「個人的には、これからの日本の消費市場では『質』が重要であり、人口減少が進む中、量の縮小を質で補う必要があり、好景気の良き時代の経験値と、この先の日本の社会のあり方への憂いを合わせ持つこの世代の女性への期待は大。単なる高額消費だけでなく、高品位な消費をしてくれるのではないかと思っている」(橋本さん)。(図1

こうした中、産官学を巻き込んで、グンゼの提唱する「オトナ思春期」のコンセプトを広げ、更年期以降の世代がより快適に過ごせる新しい価値観を社会に生み出せないか、と動き出したのが、一般社団法人「オトナ思春期をデザインするプロジェクト」(通称オトハルプロジェクト、https://www.facebook.com/otoharu?fref=ts)だ。

創設メンバーの一人でベネッセの妊娠・出産・育児雑誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」などを創刊プロデュースした、オトハル世代まっただ中の三好洋子理事長は、「日本では年を取るほど幸福感が下がるという統計がある。私たち"オトハル世代"は、これまでの若い女性向けの市場の延長線では解決できない悩みや不安を抱えているし、自分たちに起こる変化に対応する知識や知恵が少ないのも事実。でも個人、企業、社会も含めてこの世代に起こる変化を学ぶことで、新しい価値と製品やサービスを創造でき、年を重ねるほどに幸福感が高まる社会が作れるはず」と力を込める。

ハイヒールの46歳の壁を破る

「オトハル」のコンセプトに共感し、新たに45歳以上の市場開拓の模索を始めたのが、2012年8月に1号店をオープンしたばかりの婦人靴販売の「KiBERA(キビラ)(https://www.kibera.jp/top.php)」だ。同社は、店頭で顧客の足のサイズを3D計測し、イタリアの革を使ってオーダーメードに近い形で作った婦人靴を販売する。自分に合う靴がほぼ2万円以下という手ごろ価格で買えるとあって、急成長する注目企業。ただし、現在の中心顧客は30代女性だ。

創業者の福谷智之社長によると「婦人靴には"46歳の壁"がある」のだという。同社のデータから、ハイヒールを履く人が46歳から急に減り始めることが判明したのだ。その背景を調べてみると、年齢とともに足のアーチ支える筋力が衰える→ヒールの高い靴を履くと前すべりして、つま先が痛い→幅広の靴を履く→さらに前すべりして痛くなる→ローヒールを履く→ハイヒールを履くのが怖くなる、といった悪循環があることがわかった。

40、50代の働く女性にとって合わない靴は悩みの種。颯爽(さっそう)とヒール靴を履きこなしたくても、既製靴では筋力が衰えた足に対応できるものが見つからず、痛さを我慢するか、あきらめてローヒールにするか、の2者選択を迫られている人が多い。

その点、3D計測をして、足や足裏の形にぴったりフィットするインソールで弱った筋肉を支えてくれる靴なら、ヒールが高めでも疲れや痛みを感じにくくなる。

実際、オトハルプロジェクトが、働く40、50代の女性を集めてKiBERAの靴の試し履きの会を行ったところ、それまでハイヒールをあきらめていた女性たちの中から「9センチヒールでも足が安定する」といった驚きの声が上がり、「これまでのパンプスと履き心地が違う」といった声も多く聞かれた。

7センチ以上のヒールを履いた経験はなく、現在はもっぱらローヒールを愛用する筆者(バブル更年期世代)も試してみた。初体験のKiBERAの9センチヒールは、意外なほど立った時に安定感があり、包み込むようなフィット感にも驚いた。同時に鏡に映った自分の姿を見て「足が長く見え、姿勢もより美しく見える」という、ヒール靴のキレイの方程式を再認識。久しぶりのワクワク感に、もう一度、高めのヒール靴に挑戦してみようか、という気持ちになった。

「46歳であきらめたら、その先のファッションの楽しみも狭まってしまう。どんな年齢の女性も、素敵でありたい気持ちは持っている。加齢で足の形が変わり、合った靴を履かないと健康も害する原因になることも含めて理解してもらい、足に合った靴を体験してもらうことが必要。それで価値を認めてくれたら、ヘビーユーザーになってくれるばかりか、友人だけでなく娘や自分の親も店に連れてきてくれる巻き込み力がある」と福谷社長。福谷社長は「納得」したバブル更年期キャリア世代のそうした行動力をすでに数多く目の当たりにしているという。「この市場がきちんと開拓できれば、この世代の売り上げだけで、今の売り上げの1.5倍以上になる」と福谷社長は予測する。

バブル更年期キャリア市場はポテンシャルが高い。だが、企業もそして当の消費者自身も、更年期が引き起こす心身の変化について理解が十分とはいえず、研究もまだ少ない。市場を堀り起こすためにはまず、「この世代の心身の変化を学ぶこと」が出発点。そして、その変化に伴う不調や不快感、あきらめの原因を探り、それを補う「解」を提供すれば、この世代は必ず周囲を巻き込みながら前向きのアクションを起こしてくれる。彼女たちはお宝世代なのだ。

黒住紗織(くろずみ・さおり)
日経BPヒット総合研究所主任研究員。日経BP社ビズライフ局プロデューサー。サンケイリビング新聞社を経て、90年、日経BP社入社。『日経レストラン』『日経ベンチャー』などの記者を経て、2000年より『日経ヘルス』編集部。その後『日経ヘルスプルミエ』編集部 編集委員など。女性の健康、予防分野の中で、主に女性医療分野を中心に取材活動を行う。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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