体幹使ったウオーキング 基本は「骨盤の前傾」から
金哲彦
金さんによると、3つのポイントがあるという(写真1)。1つ目は「腕の振り方」だ。ウオーキングの時に、腕を大きく前に振る人がいるが、「体幹ウオーキング」では、腕は後ろに引くことが鉄則。その際、腕を動かすだけでなく、肩甲骨をしっかり動かすように意識することが大事だという。写真1―(3)参照。
2つ目は「体重移動」だ。片足が着地すると同時に、その片足の側の骨盤が素早く前方に出るように意識しよう。写真1―(3)→(4)参照。スムーズに体重が移動すれば、ムダのない歩き方になる。
3つ目は「体の軸」だ。頭のてっぺんから足の裏まで1本の軸が通っているようにイメージしてみよう。その軸をほんの少しだけ前傾になるよう意識する。写真1―(5)参照。すると、着地時の衝撃を体幹で受け止めやすく、体がスムーズに前方へ移動できる。効率的に体重移動できれば、余計な部位に力が入らないため、長時間歩いても疲れにくくなるのだ。
「これらの3つのポイントをふまえた歩き方と、自分の現状の歩き方を比較してみましょう。その違いを修正していくのが、『体幹ウオーキング』をマスターする近道です」と金さんはアドバイスする。
肩甲骨を寄せて腕を引く
ここからは、"体幹ウオーキング"を実践するためのコツを大きく2つ紹介したい。まずは体幹を使った「腕振り」から。基本の姿勢をつくるために、肩甲骨を背骨に向けて寄せてみよう(写真2)。すると自然に胸が開き、背筋がスッと伸びる。次に、その姿勢のまま腕を後ろに引いてみる(写真3)。引いた側の肩甲骨がしっかり動いているのを感じられればOKだ。
その時、肩が上がったり、肩甲骨の動きが固かったりする人は、肩に力が入っている。あるいは、肩甲骨の可動域が狭い可能性がある。腕振りを始める前に、「肩甲骨を寄せるエクササイズ」(写真4)を試してみるのがお薦めだ。
そのエクササイズとは、顔を真っすぐ前に向けて立ち、肩の力を抜いてリラックスしながら立つ。次にバンザイをするように左右の腕を伸ばして上げてみよう。この時、腕が顔より前方にならないように意識してほしい。次に左右の肘を曲げ、胸を開きながら腕を引き下ろす。肩甲骨を背骨に寄せるように意識するのがポイントだという。
骨盤を前傾させて歩幅を広げる
肩甲骨を使った腕振りができれば、次は「骨盤」だ。歩くときに骨盤を意識している人は、あまりいないのではないだろうか。骨盤とは背骨と大腿骨(太ももの骨)をつないでいる骨で、上半身と下半身をつなぐ役割を担う。
「骨盤の動きが固いと上半身と下半身がうまく連動せず、動きがバラバラになります。股関節から下だけを動かして歩く人がいますが、それは骨盤がうまく使えていない証拠。歩幅が狭くなり、足腰に負担がかかってしまいます」と金さんは話す。
骨盤をうまく使って足腰の負担を減らすには、「骨盤を前傾させる」ことがポイントだそう(写真5)。しかし、「骨盤を前傾させる」と言われても、イメージしにくい人は多いはず。そこで丹田(へそから4~5cm程度下の部位)に力を入れてみよう(写真6)。
丹田に力を入れると、体が安定するので誰かがあなたの体を押しても倒れにくくなる。重心を安定させて、お尻を後ろに引き上げるようにイメージすれば、骨盤は自然に前傾する。その際に注意したいのは、お腹を突き出さないこと。腹筋の弱い人が無理に骨盤を前傾させようとすると、お腹が突き出て腰が反りすぎてしまう。腹筋に適度な力を入れ、腰が反りすぎないようにしよう。
「骨盤を前傾させられれば、無理に骨盤を動かそうとしなくても、自然に歩幅が広がり、ダイナミックに歩くことができます。骨盤の部分も脚だと思って歩くといいでしょう。また、肩甲骨を動かしながら腕振りをすれば、連動して骨盤も動きやすくなります」(写真7)
骨盤の動きが悪い人は、骨盤周りの筋肉をほぐすようなエクササイズ(写真8)を試してみるといいと金さん。一つは「骨盤回し」だ。手を腰にあて、骨盤をグルグル回すだけの簡単な運動だが、骨盤周りの筋肉がほぐれる。ポイントは、頭の位置を固定し、腰だけを回すように意識すること。
もう一つは「骨盤足踏み」(写真9)。骨盤を使ってその場で足踏みをするだけの運動だ。膝を伸ばしたまま、骨盤を左右交互に引き上げるようにイメージしてみよう。
今回は、「体幹を使った腕振り」と「骨盤を前傾させる」の2点のイメージがつかめればOK。この基本姿勢を普段から意識するだけでも、あなたの歩く姿は劇的に変わるはずだ。
(文:高島三幸=ライター、撮影:村田わかな)
プロ・ランニングコーチ
1964年生まれ。早稲田大学在籍時に箱根駅伝で4年連続で山登りコースの5区を担当し、区間賞を2度獲得した。現在は、五輪出場選手向けのランニング指導から、一般向けのウォーキング指導まで、幅広い層に向けたコーチングを行っている。駅伝やマラソンの解説者としても活躍している。
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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