本の題名、やたら長くなっているのはなぜ

KADOKAWAアスキー・メディアワークスが発刊する電撃文庫が今年1月に発行した本は、タイトルの長さが極め付き。「男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。」で、字数はなんと54字。電撃文庫では最長のタイトルだという。

こうした傾向はいつから始まったのか。

きっかけは電撃文庫のヒット作

講談社ラノベ文庫編集長の猪熊泰則氏によれば、ライトノベルも昔は「とらドラ!」(KADOKAWAアスキー・メディアワークス、06年)など、「読んだときの音の響きが良い4文字のタイトルがはやっていたが、08年に電撃文庫から出た『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のヒットで状況が変わった」。同書の累計発行部数は全12巻で500万部。このヒットを受け、他の出版社もこぞって説明口調にしたタイトルのライトノベルを出すようになったという。

ところで、そもそもライトノベルとはどんなジャンルなのか。この分野に詳しい目白大学の久米依子教授(近現代文学)は「マンガ・アニメ的な表紙や挿絵がついたエンターテインメント小説」と定義する。久米教授によると、主要読者は10~20代の男子だが、最近は30代の読者も増えている。読者層は狭いように思えるかもしれないが、実は出版業界では「成長分野」なのだという。

オリコンの「2013年年間“本”ランキング」によると、昨年のこの分野のベストセラートップ10の売上部数はいずれも20万部以上。1位だった「ソードアート・オンライン」(電撃文庫)はシリーズ12冊の売上合計が200万部を超えており、こうした「ミリオンセラー」も決して珍しくない。小説を基にしてテレビのアニメやドラマ、ゲームなどに展開されるケースも多く、ひとたび火が付くと爆発的なヒットとなる傾向がうかがえる。

出版社間の競争で文字数増に拍車

当然、出版社間の競争も激しい。今年7月には双葉社が「モンスター文庫」を発刊して参入、8月には新潮社がライトノベルの読者層を意識したとみられる新しい文庫「新潮文庫nex」を創設した。出版各社は「他社との差別化をはかるためにタイトルの表現をいっそう工夫しなければならなくなった」(久米教授)。その一つの結果として、タイトルがどんどん長くなっていったというのだ。

もっとも、単にタイトルを長くしたからといって読者が振り向いてくれるわけではない。各社がタイトルの付け方に並々ならぬ工夫を凝らしている、その実例を見てみよう。

講談社の猪熊編集長は「語感、見たときの文字のバランス、読んだときの音。この3点に気を配っている」と話す。タイトルに現在の流行語を入れるとかえって陳腐になってしまうといった意外な難しさもあるそうだ。

アニメにもなった「俺、ツインテールになります。」(12年)。同書を発刊した小学館「ガガガ文庫」編集部副編集長の星野博規氏は「女の子を連想する『ツインテール』という言葉と『俺』という言葉を組み合わせたことで意外な印象を読者に与える」という。また「ファンタジー作品の場合、『魔王』や『勇者』など読者が好きそうなキーワードをタイトルに盛り込むことで本の中身のニュアンスを出す」という手法もあるらしい。

ライトノベルと並んで長いタイトルの本が多い実用書・ビジネス書の分野はどうか。

ビジネスマン向けの書籍が多いPHP研究所新書出版部の藤岡岳哉氏は「『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問からはじめる会計学』(光文社、05年)がヒットしたのをきっかけに、説明型の長いタイトルが増えた」と分析する。

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