長い2人の老後 どう過ごしますか?
えっ、僕は?
「ねえ、あなたはいくらくらいの生命保険に入っているんだっけ?」「この保険はあなたが亡くなったときに残された子どもに毎月お金がおりるのよね」。
近ごろ妻と話していて、うすら寒い気分になることがある。妻が僕の亡き後のことを結構リアルに考えているのが伝わってきて、がく然とするのだ。
妻のまわりで、旦那さんの亡くなった友人が増えているのがきっかけらしい。金銭面でも子どもの教育の面でも苦労している話を見聞きするにつけ、明日は我が身とばかりに身構えるようになったのかもしれない。
老後の生活設計について話していても、ふと気がつけば、僕が死んで「おひとりさま」になっているのを前提に頭の中でソロバンをはじいている。「しっかり自分の力で生きていかないとね」なんてしみじみと語られ、僕はどう反応したらいいのか分からなくなる。
女性はこういうところで現実主義者だと思う。僕はと言えば、妻の亡き後なんて考えられない。退職後といえば、妻と一緒の生活しか思い浮かばない。たまに旅行に出掛けるのも楽しみだ。ずっと一緒のつもりだから勝手に僕を抹消しないでくれよ。
増えるため息
あ~あ、熟年離婚する女性の気持ちがわかるなあ。最近、ため息をつく回数が増えた気がする。
定年退職して自宅でのんびりしている夫に私のいらいらは募る。もともとマイペースだったが、最近は拍車が掛かっている。何をするのも「自分時間」。おなかがすいたら一人で何かつくってさっさと食べ、眠くなったら何時でもベッドへ直行する。デスクでパソコンをたたき始めたら話しかけても返事もしない。
家でぶらぶらしているから「庭いじりでもしたら」と勧めれば「そういうことは好きじゃない」と一言。ぶらりと下町探索に出かけたり、自転車で遠出をしたりはしているから趣味がないわけでもないようだ。
共働きで互いに好きなように生きてきたから、今さら相手を縛ろうとは思わない。でも長い老後を思うと、少しは歩み寄って一緒に遊んだりすることも必要じゃないのと思う。
それなのに夫ときたら、全く関心なし。まあ、私には少し寂しくなったときに話をしたり、ビデオを一緒に見たりしてくれる息子たちがいるから平気だわと思っていたら、長男が「お母さん、僕たちが独立したらお父さんと二人だよ」。どうしよう……。
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