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日本の色、始まりはご来光

2014/11/13

 古来、自然の素材を染料にして繊細な色彩文化を築いてきた日本人。営みの始まりは太陽の光だ。和の色は四季が移り変わる列島という大地ではぐくまれた、まさに日の本の色だった。

 午前5時、闇に包まれていた本栖湖(山梨県身延町、富士河口湖町)の上空に青みがさした。対岸に富士山のシルエットが淡く浮かび上がる。稜線(りょうせん)がわずかに赤く染まっている。

【暗(くろ)】 夜明けを迎えた富士山(本栖湖)=写真 編集委員 井上昭義

 古代人がどんな色彩を目にしていたのかを感じ取ろうと10月末、人工の光がほとんどない本栖湖畔で夜を明かした時のことだ。漆黒の闇がまるで吸い込まれそうなほど深かっただけに、青い世界の到来に安堵した。

【淡(あお)】 河口湖=写真 編集委員 井上昭義

 だが太陽はなかなか昇ってこない。その日の変化は6時17分ごろ起きた。太陽が強烈な光線を放ちながら顔を出し、その瞬間、皮膚に暖かさが伝わってきた。闇に沈んでいた山々が一斉に照らし出され、ゴージャスな赤い世界が広がる。やがて白く強い光を映して湖が輝き始めた。

【明(あか)】 本栖湖=同
【顕(しろ)】 刻々と変化していく空や湖の色が、日本の色の原点(本栖湖)=同

4色の起源はご来光

 「色の始まりはご来光だったのではないか」。日本の色彩文化に造詣が深い染色家の吉岡幸雄さんは話す。圧倒的な存在感で闇を消し去る太陽に、古代の人々は強い色彩を認めた。

 戦後、色彩研究で先駆的な業績を残した長崎盛輝は著書「色・彩飾の日本史」の中で、最初に生まれた色彩を表す言葉は赤、白、青、黒の4色だったと記している。

 赤はご来光などの「あかし(明るい)」と同じ語源から生まれたという。同様に、白は、景色がはっきり顕著になる「顕(しる)し」、青は薄暗がりの「淡し」、黒は「暗し」と同じ語源から生まれたとみている。

 この4色は、他の「茶色い」などのように後ろに「色」と付けなくても成り立つので古い大和言葉だとされる。

 ただし、共立女子大学名誉教授の城一夫さんは「4色だけだから、それぞれの色に、現代より広範囲の色彩が含まれていただろう」と話す。

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