マンモグラフィ検診で発見が難しい乳がんを知って
「乳腺濃度」とは、「乳腺の組織が乳房内にどれだけ存在するか」の割合のこと。乳腺濃度が高い「高濃度」の乳房は、日本を含むアジア人に多く、乳腺濃度が高いとマンモの画像では真っ白に映るため、同じく白く映る腫瘍との判別が困難だ。
「端的にいえば、乳腺濃度が高い人は、マンモ検診では乳がんが見つけにくい。そして、日本女性は欧米人に比べ、高濃度乳腺の人が多いといわれる」と亀田京橋クリニック画像センター長の戸崎光宏さんは強調する。
「米国ではマンモ検診で乳腺濃度が高いことが分かった場合、"受診者に乳腺濃度についての情報を伝えること""超音波検査など追加の画像検査を受けるよう薦めること"などを法律で義務付ける動きが広がっており、2014年4月現在で15以上の州で施行されている」(戸崎さん)。
翻って日本では、自治体検診や職場検診として検診車や公共の保健センター、検診施設などでマンモでの乳がん検診を受ける人が多い。この場合、乳腺濃度が高くてマンモに適さない乳房でも、現状ではそのことが本人に通知されることはほとんどない。結果だけ受け取った受診者は、本当に「異常なし」なのか、乳腺濃度が高く「見えなかった」のか分からないのだ。
こうした状況を避け、正しい診断を得るには自分の乳腺濃度を知ることが大切。乳がん検診の結果が紙で通知され、異常の有無しか書かれていない場合は、一度医師から直接結果を聞ける施設で検診を受け、乳腺濃度の状態を尋ねてみよう。「もし"高濃度""不均一高濃度"の乳腺といわれたら、乳腺濃度の影響を受けない超音波検査も併せて受けて」(戸崎さん)。
マンモが乳がんの早期発見に高い信頼性がある検診であることに変わりはない。だが今後は、個々人のリスクファクターを知り、それに応じた検診を受けることが必要だ。戸崎さんらは、そうした働きかけの活動を開始予定という。
1.自治体検診や職場検診の結果が紙で通知される場合
→一度、自由診療(自費)で、検査結果を対面で医師から聞ける施設で検診を受け、乳腺濃度の状態を教えてもらう。濃度が低い(脂肪性乳房)といわれたら、以後マンモ検診でOK
2.自治体検診や職場検診で、受診施設を自分で選べる場合。 人間ドックや自由診療(自費)で検診を受ける場合
→検査結果や乳腺濃度の状態を対面で聞けるか、事前に確認して施設を選ぶ
亀田京橋クリニック画像センター長。放射線科医。東京慈恵会医科大学卒。同大学放射線科ほかを経て現職。日本乳癌学会乳癌診療ガイドライン作成委員。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク理事長。乳腺画像診断の権威。
(女性医療ジャーナリスト 増田美加)
[日経ヘルス2014年11月号の記事を基に再構成]
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