主婦の再就職、キーワードは「自信回復」
女性活躍推進、人手不足…、企業からも熱視線
「目指すは28年ぶりの仕事復帰です」。東京都の主婦(52)は、はにかみながら話す。東京しごと財団(千代田区)が7月に開設した「女性しごと応援テラス」の再就職セミナーを10月に受講した。20代で寿退社し、ずっと専業主婦だ。大学生の娘が就職活動で奔走する姿を見ていて、生き生きと働いていたかつての記憶がよみがえった。「できるかどうか分からないけど、もう一度働きたい」
8割以上が意欲的
公的な職業紹介はハローワークが一般的だが、同テラスは主婦らに特化する。主婦として培った能力のアピールの仕方や履歴書の書き方などを助言し、求人も独自に集めて仕事と家庭の両立に配慮する勤務先を紹介する。「再就職希望の主婦が昨年から増えている。9月末までに385人が登録し、46人が再就職した」(女性再就職支援担当)
専業主婦の就労意欲は意外と高い。リクルートジョブズ(東京・中央)の「主婦の就業に関する1万人調査」(2013年12月実施)によると、子どもを持つ20~40代既婚女性の59%は無業だ。だがこのうち86%が「今後仕事に就きたい」と答えた。
景気回復に伴う人手不足で企業も主婦に期待する。大田区産業振興協会(東京)が10月に主催した「ヤングジョブクリエイションおおた2014」。区内の中小企業と求職者を橋渡しするイベントに今年初めて「マザーズ専用相談コーナー」を設置した。「中小企業は特に人材採用が難しくなっている。子育て中の女性を敬遠する風潮がこれまではあったが、もうそうも言ってられない」(同協会)
国も対策に乗り出した。スキルや知識の磨き直し研修と職業紹介をセットにしたキャリア・リターン応援制度を今年度から始めた。今後3年間で主婦ら1800人の再就職を支援する。
2人の子を持つ女性(37)は国の委託を受けたアデコで7月に制度を利用。翌月損害保険会社に採用された。長男(12)を出産してアパレルメーカーを辞めた。その後に産んだ次男も6歳になり、キャリアを積み直そうと本格的に再就職活動を今年3月始めた。
だが壁は厚かった。20社以上に履歴書を送り、面接に呼ばれたのは2社。そこも不採用だった。自信を失いかけたところで同制度を知った。研修は丸2日。職務経歴書の書き方や面接対策、OA研修など多岐にわたった。「2日間で冷静に自己分析。自分の強みは表計算ソフトを使いこなせることだと気づいた」。強みを生かせる求人をアデコに紹介してもらい、まもなく内定を得た。
ブランクがあっても潜在能力が高い主婦は少なくない。自信回復の"特効薬"は実践だ。
大卒女性の再就職支援に取り組む日本女子大学リカレント教育課程は9月に西友の協力を得て体験型プログラムを実施した。教室で専門知識を学ぶだけでは実戦感覚がよみがえらないと考えた。
プログラム受講者13人は5日間にわたって西友の店舗や物流拠点、総菜工場などを視察。最終日に業務改善策を西友の執行役員7人らに直接提案した。
まずは週3日から
荷分けの工夫や食の安全のPR法……。提案は西友にとっても予想以上の出来だった。一部は採用を検討中だという。同大学教授の高頭麻子さんは「再就職を目指す女性にとって、ビジネスの現場と自分の距離感を知る貴重な機会となった」と強調する。
リクルートジョブズの調査では、離職期間が長くなるほど「昨今の職場に適合できるか」「体力的に続けられるか」など再就職への不安が高まる傾向も見られた。同社ジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子さんは「あれこれ考えていては再就職はますます遠ざかる。週3日、短時間でもいいからまずはチャレンジ」と助言する。(編集委員 石塚由紀夫)
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