名指揮者パッパーノに来日直前インタビューローマの名門楽団と3年ぶり

名前の響きこそ純イタリアンだが、指揮者アントニオ・パッパーノ(1959年~)は英国生まれの米国育ち、ワーグナー楽劇の聖地とされるドイツのバイロイト音楽祭でも修業を積んだコスモポリタンである。

サンタ・チェチーリアとドイツ音楽

現在、ロンドン・コベントガーデンのロイヤルオペラハウスとローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の音楽監督を兼ね、2012年にはエリザベス英国女王からナイト(サー)に叙せられた。今年11月、サンタ・チェチーリアとの3年ぶり3度目の日本公演に先立ち、ロイヤルオペラの監督室に電話を入れ、インタビューした。

サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の本拠地、アウディトリウム・パルコ・デラ・ムジカ(レンゾ・ピアノ設計)で歓声にこたえる音楽監督、アントニオ・パッパーノ

――今回の日本公演のメーンディッシュはAプログラム(11月9日・宮崎、11~12日・東京)がR・シュトラウスの「アルプス交響曲」、Bプログラム(5日・京都、7日・東京、10日・名古屋)がブラームスの「交響曲第2番」。ドイツ・ロマン派の後期、盛期を代表する傑作を並べている。イタリアのオーケストラの来日演目としては、かなり異例との声もありますが。

「サンタ・チェチーリアはオペラ大国のイタリアにあって例外的なシンフォニー専門オーケストラとして1908年に発足した。世界中の交響楽団にとって、ハイドンからモーツァルト、ベートーベン、ブラームス、ブルックナー、マーラーに至るドイツ・オーストリア音楽はレパートリーの中心に位置する。イタリアの楽団だからといって、自国の作品のスペシャリストに自らを狭める理由は何もない。ドイツ音楽には誰が聴いても血湧き肉躍る趣があり、私たちはドイツのオーケストラとは少し違う色合いで、その魅力を再現できると自負する。第2番は4曲あるブラームスの交響曲の中で最も叙情に富んで人間味にあふれ、美しい。アルペン(アルプス交響曲)はR・シュトラウスの生誕150年にちなみ、ローマの10月25日の特別演奏会で手がけたばかり。巨大編成の興奮と色彩あふれる情景描写に満ち、私の楽団(マイ・オーケストラ)は持てる表現能力を最大限に発揮するだろう」

――来年の欧州内のツアーではブルックナーの大作、「交響曲第8番」を作曲家の本国オーストリアでも演奏しますね。

「ブルックナーはワーグナーに傾倒していたので、ワーグナーの楽劇を知らずしてブルックナーの交響曲を指揮するのは難しい。私は長年、バイロイトやロイヤルオペラでワーグナーの上演に携わってきた。ブルックナーはカトリック教徒で、教会のオルガン奏者も務めた。ローマ法王のバチカンの門前で活動する私たちローマの演奏団体にとって、大いに適した作品といえる」

――協奏曲のソリストはチェロがマリオ・ブルネッロでドボルザーク(プログラムB)、バイオリンが諏訪内晶子でブルッフの第1番(同A)です。

「ブルネッロは3年前、ドボルザークの協奏曲をCDへ録音するために初共演して以来、重要なパートナーになった。音楽性のみならず、ライフスタイルや思索も含め、破格のアーティストといえる。最近は『シレンツィオ(沈黙)』という題の著書を出版し、話題を呼んでいる。諏訪内は今回のツアーが初対面。ブルッフは私の大好きな曲だし、和声進行やメロディーに『アルプス交響曲』と似た部分もあるので、楽しい演奏会になると思う」