アニメ出演本数で見る 声優ランキング【男性編】
日経エンタテインメント!
出演本数1位は櫻井、一番手は2年連続で逢坂
2014年出演数1位に輝いたのは、16作品にクレジットされた櫻井孝宏。2012年と2013年に実施した同ランキングでも2位に入っており、アニメに欠かせない存在であることを見せつけた。
櫻井の声優デビューは1996年。『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006年)、『モノノ怪』(2007年)、『化物語』(2009年)などの人気作に次々と出演し、着実にキャリアを積み上げてきた。低音でストイックさを感じさせる艶やかな声色と、ナチュラルな演技で、正統派の二枚目役も演じるが、近年は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のゆきあつや、『PSYCHO-PASS サイコパス』の槙島聖護など、二面性や狂気を感じさせる、一癖も二癖もある難解なキャラを任されることも多い。多様な役柄を表現し、作品に爪痕を残せることが強みとなっている。
変動が少なく上位陣は安定
2位には15作品で中村悠一が入った。女性ファンの間で「イケボ(イケメンボイス)といえばこの人」と評される声質が武器。演技力も高く、二枚目から女装キャラ、テンション高めのやんちゃキャラまで変幻不在だが、2014年はクールな年長者を数多く担当し、存在感を放った。
14作品で続くのは、主役だけでなく脇役にも引っ張りだこの梶裕貴と福山潤の2人。梶は、2013年に主演した『進撃の巨人』が社会現象を起こすまでの大ヒットとなり、若手の枠を超えて、名実ともにトップ声優の仲間入りとなった。30代半ば以上が主力のなか、今後最も伸長が期待される1人だ。福山は、甘く優しい声と低く硬質な声を使い分ける実力派。女性役までこなした演技の引き出しの多さは、業界でも折り紙付き。
そして今回ひときわ異彩を放つ、アラフィフの小山力也が13作。『名探偵コナン』の2代目・毛利小五郎役として、その声に聞き覚えがある人も多いだろう。舞台出身で、張りのある低く響く声が特徴。父親役や物語のカギを握る指南役などをコミカルに、またシリアスに演じる、名バイプレーヤーだ。
小野大輔以下、宮野真守、浪川大輔、下野紘はこのランキングの常連だ。いずれも毎年主役を数本担当し、脇役でも輝きを見せる。また、近年声優に求められる歌やトークスキルも高く、作品イベントやラジオ、キャラソンでも大活躍し、声優ブームをけん引するメンバーたちだ。宮野、浪川らはアーティスト活動も活発で、声優の可能性を大きく広げている。
小西克幸は、強く説得力のあるミドルボイスで頼れる兄貴キャラを歴任してきたベテラン。安定感抜群の演技は2014年も健在だった。
若手で目立ったのは12作品の松岡禎丞。若手の飛躍には、認知度を一気に広げるための当たり役が必要だが、現在2期が放送中の『ソードアート・オンライン』でのキリト役が転機となり、出演作を増やしている。主演数も6本と2位に付ける。
主役&一番手は逢坂がV2
主役&一番手ランキングのトップは、2013年から引き続き逢坂良太。『ハマトラ』『シドニアの騎士』など7作品に出演し、その全てで主役&一番手を務める強さを見せた。嫌みのない澄んだ声を武器に、10代少年の揺れる心情や、時に暴走する一途な感情を何色にも染められない個性で演じ切った。
前出の松岡と並び6作品を数えたのは、国民的アニメ『ドラえもん』でスネ夫を演じる、デビュー20年を越えるベテランの関智一。高低差のある声と振り幅の大きい演技力で、深夜アニメの格好いい主人公から、2014年最大のヒットといえる子ども向け番組『妖怪ウォッチ』まで広く活躍した。
花江夏樹は飛躍の年に。8作品に出演し、主演は5作。振り回され系男子から冷静沈着な主人公まで好演した。『東京喰種トーキョーグール』の最終回で見せた心打つ悲痛な叫びは、デビュー4年目ながら演技の幅の広さを感じさせた。10月期もノイタミナ『四月は君の嘘』で主演と波に乗っている。
2013年、水泳スポーツものの『Free!』でブレイクを果たした島崎信長は、勢いそのままに10作品に出演し4作品で主演。また、りんとした声が持ち味の石川界人も、各クール1作は必ず主演し地力を増す。
男性声優の場合、声の経年劣化が少ないため、一度人気が出ると長く第一線で活躍ができる。そのため、例年ランキングに変動はあまり見られないが、作品数の増加なども手伝って若手にもチャンスが増えているという。来年、次なる松岡や逢坂は現れるのか、注目していきたい。
(ライター 山内涼子)
[日経エンタテインメント! 2014年11月号の記事を基に再構成]
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