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女性活躍に本気を出すセブン、快進撃の源泉

日経BPヒット総研所長 麓幸子

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NIKKEI STYLE

 エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。いまを象徴するキーワードから、話題の理由、面白いワケなど、「ひみつ」を明らかにします。今回のキーワードは【セブンの女性活躍改革】。2014年、女性が活躍する企業ランキングで小売業が躍進しています。セブン&アイ・ホールディングスを例に、躍進の要因を分析します。

今国会の焦点のひとつは「女性の活躍」だ。政府は、従業員が301人以上の大企業が女性の育成・登用に向けた行動計画をつくり、公表することを求める女性活躍推進法の成立を目指す。女性育成・登用は女性のために行うものではなく、企業の持続的成長のために行うべきもの。企業の実情にそぐわない計画や目標を立てても画餅に帰すだろう。

どのような女性活躍施策が企業の力を高めるのか。今回は、セブン&アイ・ホールディングスをひとつの事例として、女性活躍施策のベストプラクティスとは何かを考察したい。

100位圏外からベスト10にジャンプアップ

2014年4月に発表した「日経WOMAN女性が活躍する会社ベスト100」では、ベスト10内に、セブン&アイ・ホールディングス(7位)、イオン(9位)、高島屋(10位)と小売業が3社ランクインした。2013年はベスト10には小売業は1社も入っていなかったので女性活躍における小売業の存在感は高まっている。日経WOMAN企業の女性活用度調査(2014年)によると、小売業は女性社員比率38.3%と全社平均の26.7%より11.6%も高い、女性社員の多い業種である。それに比例するように女性管理職比率も15.9%と高く、平均8.0%の2倍の比率となっている。

そういう業種の特色はあるものの、2013年の同ランキングでは100位圏外だったセブン&アイ・ホールディングスの急上昇ぶりが突出している。これは、2013年までは事業会社ごとに回答していたものを、2014年はグループ6社を含む形で一括して回答したことが功を奏したようだ。ほかにも、同社は、2月に「エンパワーメント大賞」(日本生産性本部)受賞、10月6日発表された「人を活かす会社」(日本経済新聞社)でも前年より35位ランクアップして14位になるなど、躍進ぶりが目立つ。

強いリーダーシップとKPIの設定およびPDCAが重要

この躍進を実現させている要因は何であろうか。まずは間違いなく経営トップのコミットメントだろう。

セブン&アイグループで初めての女性役員が誕生したのは1993年(イトーヨーカ堂、セブン‐イレブン・ジャパン1人ずつ)。90年代より女性を積極的に役員や店長に登用してきたが、2006年決算発表説明会にて鈴木敏文会長が「今後は女性役員の割合を2割から2割5分にしていく」と発表、さらに2012年3月にグループ各社の幹部社員が一堂に会する「グループ経営方針説明会」では、グループ全社員に向けて女性の活躍推進を明言、同6月に「ダイバーシティ推進プロジェクト」を発足させ、取り組みを加速させている。

同グループダイバーシティ推進プロジェクトリーダーとして女性活躍推進を担っているのは、セブン-イレブン・ジャパン取締役執行役員秘書室長の藤本圭子氏だ。

「経営トップの鈴木が強いリーダーシップを持ち、グループ会社にまたは社外に向けて女性登用の重要性を発信してくれるのがありがたい。毎年、『(女性役員を)今年は何人を出すのか』とグループ会社に尋ねる。女性役員を登用するかどうかではなくて、登用がすでに前提でさらに人数を聞くわけです。グループ会社は育成・登用に注力せざるを得ません。女性登用の目標数値を設置するかどうかがひとつの争点になっていますが、目標数値のない事業などありえないでしょう。推進体制をつくり、課題を洗い出し、目標を設定し、施策の実施・改善をする。KPIを設定し、PDCAサイクルを回すことが女性活躍には重要です」と藤本氏。

女性部下と上司70人をヒアリングし課題を的確に抽出する

同グル―プは、2015年2月までに女性管理職比率20%を目標にしていたが、それを2014年2月に達成したため、新たに、2016年2月末までに女性課長級以上20%達成、係長級以上30%達成を目標に設定し直した。ほかに、男性の育児参加促進や従業員満足度調査の向上、社会的評価の向上も目標に設定されている。前述したような社外の調査や企画に積極的に回答・対応しているのもこの目標に沿っている。

同グループが順調に目標を達成する理由を、筆者は、2012年6月の推進プロジェクト立ち上げ前に実施した課題抽出が大きいとみる。立ち上げより約9カ月前の2011年9月、女性部下とその上司約70人にヒアリングを実施したところ、出産後の仕事の仕方やキャリア継続に関する不安が大きいことがわかった。プロジェクトのメンバー自体は藤本氏も入れて7人だが、その後、中核事業会社8社で発足したダイバーシティ推進連絡会で、事前ヒアリングで明らかになった課題が共有できたこともプロジェクト推進に大きく寄与していた。

女性活躍推進のためには、何が女性活躍の阻害要因となっているかを正確に把握する必要がある。そこが間違うと"ボタンの掛け違い"で奏功性の高い施策が打てないということになる。現在多くの企業が抱える課題は女性の就業継続であり、また、たとえ就業継続ができて女性の母集団が形成されたとしても女性管理職がなかなか増えないということである。

しかし、女性登用に成功している企業は、同社のようにヒアリングや従業員意識調査などのサーベイを実施して、女性自身が感じる悩みを丁寧にすくいあげる仕組みを持つ。その上で、それを分析して抽出した課題を解決する施策を展開する。

同社の場合は、ヒアリングの結果、「女性の意識改革」「制度運用の見直し」「管理職の意識改革」の3つの課題が浮き彫りにされた。それに対し、2012年7月から2年足らずの間に課題解決のための施策を矢継ぎ早に繰り出している。

育児中の女性社員にも期待を伝え、仕事の覚悟を問う

女性の意識改革では、子育て中の社員のネットワーク「ママ's コミュニティ」や女性管理職のネットワークづくり「Women's Management Community」、育児復職者オリエンテーションを実施している。このような取り組み自体は珍しいことではないが、就業継続への意欲向上やモチベーションアップのために、育児期の女性社員に対して強いメッセージを送っていることに特色がある。

「ママ's コミュニティに参加する社員には、ここはママたちのグチや不満をぶつけあうコミュニティではない、もっと前向きなコミュニティであるということを約束してもらっています。またここで得たことを職場の上司や同僚、夫にもどんどん発信してください、周りを巻き込んでくださいというお願いもしています。育休復職者オリエンテーションでも、復職者には、会社の期待を伝えるとともに、働き続けることを選ぶからには相当な覚悟が必要という強いメッセージも送っています」(藤本氏)

日経WOMAN企業の女性活用度調査(2014年)では、育児・介護などで勤務時間の制約のある社員が3年前に比べて増えていると回答した企業は71%に上り、勤務時間に制約のある社員のマネジメントについて課題があると回答した企業も69%となるなど、制約社員に対して課題感を持つ企業が多い。パフォーマンスの低い制約社員を「ぶらさがり社員」と称するむきもあるが、藤本氏は「それは組織のコミュニケーション不足に原因があるのでは」と指摘する。

「育児期の女性社員に組織の期待を伝え、また社員ひとりひとりの声をすくいあげるような仕組みをつくれば違ってくるのではないかと考えます。当グル―プでは、育児をしながら職場で活躍する女性を社内報やDVDなど様々な方法で広く紹介しています。そうすることで育児中の女性社員の昇進意欲も高まってきますし、実際育児をしながら役職者として活躍する女性も増えています」(藤本氏)

「女性だけ対策」では女性活躍は進まない

女性登用に課題がある場合、「女性のキャリア意識が低い」「女性の昇進意欲が低い」と女性だけの問題に帰したり、女性だけを対象としたワークライフバランス施策(両立支援制度など)を実施したりする「女性だけ対策」では課題は解決しにくい。同社は「だけ対策」ではなく全社的な問題ととらえ3つの課題を設定した。育児や介護を女性社員だけの問題ととらえず全社員の問題ととらえ、男性の育児参加の促進のためのイクメン推進プログラムを実施する。管理職の意識改革を目標としたダイバーシティ・マネジメントセミナーを実施し、多様な人材を生かしながら成果を出す上司の育成を急ぐ。女性のキャリア開発支援策と会社全体のワークライフバランス施策を同時に展開していることも奏功しているポイントだろう。

その成果は女性管理職比率上昇以外にも様々なところで出てきている。ママ's コミュニティでは商品のモニタリングも実施、育児期の女性社員たちが商品開発の貢献もする。また、西武所沢店など女性中心の店舗運営では業務プロセスも改善された。

「女性の高いコミュニケーション能力や固定観念に縛られないフラットな感覚が組織の風通しをよくしています。男性店長時代には、最前線にいるパート販売員の意見が出しにくいムードがありましたが、女性中心の店舗となってから意見の言いやすいように車座会議を設定しました。その結果、現場から多くの提案が出るようになったんです。それをその場で即断・即決し、顧客視点を生かしたアイデアがスピーディーに実現するようになり、売上も堅調に推移しています。車座ミーティングもそうですが、作業台の高さを女性の身長に合わせることで生産性が向上するなど、現場でいろいろなイノベーションが起こっています。また、男性の登用が多かった生鮮食品売場にも女性登用が増えるなど、女性の職域も広がっています」(藤本氏)

同グループのグループ売上は13年度実績で9兆5978億円。現在、10兆円を目指す。労働人口が減少する中で、属性やライフステージにかかわらず社員が十分に活躍できる職場環境を確保することで潜在的な能力を引き出して継続的な企業の競争力強化につなげていく。

麓幸子(ふもと・さちこ)
日経BPヒット総合研究所長・執行役員。日経BP生活情報グループ統括補佐。筑波大学卒業後、1984年日経BP社入社。1988年日経ウーマン創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長、2012年同発行人。2014年より現職。同年、法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。筑波大学非常勤講師(キャリアデザイン論・ジャーナリズム論)。経団連21世紀政策研究所研究委員。経産省「ダイバーシティ経営企業100選」サポーター。所属学会:日本労務学会、日本キャリアデザイン学会他。2児の母。編著書に『なぜ、女性が活躍する組織は強いのか?』(日経BP社)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日経新聞出版社)などがある。
[参考] 日経BPヒット総合研究所では、講演、研修、広報支援、コンサルティングなど企業の女性活躍推進のための事業を展開する(http://www.nikkeibpm.co.jp/kensyu/seminar/divken/)。

なぜ、女性が活躍する組織は強いのか

著者:麓幸子・日経BPヒット総合研究所編
出版:日経BP社
価格:1,998円(税込み)

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