マネー研究所

わたしの投資論

株価にフェアバリューは存在しない(藤原敬之)

2014/10/16

「波多野聖」のペンネームで小説家として活躍する藤原敬之氏は、4年前まで、累計5000億円を運用してきたファンドマネジャーだった。「本物の個人投資家を育てるお手伝いをしていきたい」と語る藤原氏に、マーケットの最前線で磨いてきた投資の極意を聞いた。

■巨額の損、血の気の引く音を聞いた

農林中央金庫で債券のディーリングをしていた26、7歳のころ、1日で3億円の損を出したことがあります。大量に買った瞬間から売り気配になる最悪の展開でした。気配値が下がるにつれて、ディスプレーに映る損失額が数千万円から1億、1億2000万、3000万……と膨らんでいくのに、指をくわえて見ていることしかできません。

藤原敬之(ふじわら・のりゆき)氏 1959年、大阪府出身。国内外の金融機関で日本株運用のファンドマネジャーを務めたのち独立。引退後、「波多野聖」のペンネームで小説「銭の戦争」などを発表

そうするとね、実際の感覚なのか精神的なものなのか分かりませんが、自分の中がしーん……としていくのを感じるんですよ。まるで真夏のお寺の庭みたいに。そのとき「ザクッ」という音がして、次の瞬間、頭のてっぺんから血の気がザーッと引いていったんです。それから肩、そして背中と、冷水をザーッ、ザーッと浴びせられているみたいに体が冷たくなっていきました。おそらく体が異常なまでの緊張状態にあって、血管の収縮が強烈に起こったんでしょうね。血の気が引く、まさにその音を聞いたわけです。

翌日、部長と課長に呼ばれました。さすがにクビになると思いましたが、言われたのは「今月、10億円の黒字を出せ」ということでした。そこからは気合です。その月のうちに13億円以上稼いで、損を取り返すのと合わせて10億円以上の黒字にしました。

それほどの経験をしても、相場を怖いと思ったことはありません。悔しいとは思っても、恐怖で身動きが取れなくなるようなことはなかったですね。ファンドマネジャー時代、部下にも「思考停止だけはやめろ」と常に言ってきました。

僕は「株価にはフェアバリューは存在しない」と考えています。いまの株価が適正だと思ったら、そこで思考が止まってしまいます。この銘柄は過大評価されているんじゃないか、あるいは過小評価じゃないかということを常に考えて、次にどういう手を打つかを想定しておかないといけません。投資とはすわなち思考であって、不断の思考なしに成功はありえません。

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