2014/10/20

年次有給休暇を取得中の給与については、就業規則等の規定によりますが、所定労働時間に労働した場合に支払われる通常の給与が支給されるケースが一般的といえるでしょう。この場合、仕事を休んでも給与カットはされません。

利用目的(取得理由)の記載は、任意扱い

年次有給休暇をどのように利用するかは、労働者の自由です。

したがって、労働者は会社に対して利用目的を申し出る必要はなく、会社もスト目的の場合を除いて、利用目的によってその取得を左右することはできません。利用目的を書かない限り、年次有給休暇の付与を認めないというのは、違法となるのです。

では、美和さんの会社のように、年休届に利用目的の記載欄が設けられているのは、違法だと言えるでしょうか?

利用目的によって、取得を認めるかどうかなど不当な取り扱いをしない限り、任意記載を求めることは違法ではありません。任意で書いても、書いていなくても、会社としてはそれを理由に却下する、という状況でなければ、問題とは言えないでしょう。

年次有給休暇は、自分が休みを希望する日を決めて会社に通知すれば、使用者の承認がなくても成立します。これを「時季指定権」といいます。一方で、その日に休まれることで、事業活動の正常な運営確保が困難になると判断されるときは、年次有給休暇を別の日に変えてもらう権利を使用者は持っています。これを「時季変更権」といいます。

それでは、3人しかいない部署で、業務繁忙期に「年次有給休暇を取りたい」と、2人から申し出があったとしたら、どうなるでしょう?

会社として、正常な事業の運営がどうしても確保できない、という場合は、時季変更権を行使する可能性もあるでしょう。この場合、利用目的の重大性や緊急性の程度によって、時季変更権行使の対象者を定めることは、合理性があると言えます。こうした観点から、利用目的の記載欄を設けておくなら問題はありません。

美和さんは年次有給休暇を取りにくい雰囲気の職場で、それなりのきちんとした理由がなければ休めない、と思い込んでいました。しかし、取得理由は問題ではありません。

疲れているとき、身体を休めることも大切です。しっかりと休むことで、明日への活力も生まれてくるものです。あまり職場に気兼ねしすぎて、根を詰め過ぎないようにしましょう。

佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。平成17年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロンを主宰。著書に「知らないともらえないお金の話」(実業之日本社)をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。

[nikkei WOMAN Online 2014年7月22日付記事を基に再構成]

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