ギャル雑誌の連続休刊 渋谷発ファッションは郊外へ
日経エンタテインメント!
2014年に入り、ギャル雑誌の休刊が相次いでいる。ガングロなどギャル文化をけん引した『egg』(大洋図書)が5月31日発売の7月号を持ってピリオドを打ち、大人ギャル雑誌の『BLENDA』(角川春樹事務所)も8月7日発売の9月号をもって休刊となった。また4月15日には『小悪魔ageha』を出版するインフォレストが30億円の負債を抱え、事業停止状態となっている。
1990年代中盤から渋谷を中心に花開いたギャル文化は、小麦色の肌に明るめの髪色、露出の高い派手な服装に身を包んだ10代から20代の若者たちがつくったものであった。その文化を支え続けたギャル雑誌に、立ちはだかったのがスマートフォン(スマホ)とSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だった。
旧来の携帯電話しかない時代、ギャル雑誌はパソコンと親和性の低い女の子たちを読者層に多く抱え、ネット情報を補完する役割を担っていた。しかし、スマホが一般化して以降、誰でもどこでも簡単に情報を取れるようになってしまったのだ。
SNSも今や多岐にわたり、「WEAR」のようなファッションコーディネートアプリも出現。累計300万ダウンロードを記録するこのヒットアプリは、誰でも自分の着こなしを投稿したり、人のあげたものも見ることができる。それはまるで、ギャル雑誌によくあった読者モデルのスナップ写真ページを彷彿(ほうふつ)とさせる。
加えて、若者が保守的になったという意見もある。奇抜な格好をして目立ちたいという意識よりも、周りの人たちから外れたくないという意識が強いというのだ。
「ファッションが目立ってしまうことをリスクと考える子が増えて、全体的におとなしくなってきた。疑似恋愛的な現在のアイドルブームも保守的な志向の表れのひとつ。黒髪の優等生、渡辺麻友がAKB48総選挙で1位に選ばれたことがそれを物語っている」と『ギャルと不思議ちゃん論』の著者でライターの松谷創一郎氏は語る。
さらに若者人口の減少も追い打ちをかける。総務省統計局の人口推計(2014年8月1日現在)によると、25~34歳の女性人口698万人に対して、15~24歳は596万人。10年の幅で見ても約100万人も減少している。時代とともに非正規雇用も進んでおり、消費支出力が下がり、ファッションに対する意欲は低下する一方だ。
結果、ギャルファッションの象徴であるSHIBUYA109の売り上げも右肩下がりを続けている。2008年の「H&M」や、2009年の「FOREVER21」に代表されるファストファッションの上陸が契機だったという。小島ファッションマーケティング代表・小島健輔氏は「『早い、安い、トレンディ』の三拍子そろった、ファストファッションというグローバル化の波に押され、渋谷発のファッションが行き詰まってしまった。経済力に乏しく、突出した格好を好まない今の子たちが、109よりもファストファッションを選ぶのは当然の流れだった」と話す。
郊外のギャルママ文化
ただ、地方では新たな動きが出始めている。ショッピングセンター(SC)の活況だ。なかでも好調なイオンモールは、今後も1年に10店舗のペースで出店を予定している。
それを底支えしているのが109を卒業したギャルママたちだ。「2000年以降、109系のブランドが郊外のSCにチェーン展開を始めた。ギャルママたちが、ベビーカートをひきながら店の前にたむろしている姿は、地元と家族を愛する"マイルドヤンキー現象"ともリンクしている」(小島氏)。
このように渋谷に一極集中していたギャルファッションは郊外に分散し、ギャルママたちの間で受け継がれている。
2014年8月7日には休刊となっていた『姉ageha』が出版社を移籍し復刊を果たした。誌面には「姉ママたちの現在地 2014」などギャルママを意識したフレーズが並ぶ。今後のギャル文化の行く末を占う1冊となりそうだ。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2014年10月号の記事を基に再構成]
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