ホリの深い顔立ちと鍛えぬかれた裸体で古代ローマ人になり切り、映画『テルマエ・ロマエ』シリーズを累計103億円の大台へ。平成で首位という最高視聴率42%超を記録、社会現象にもなった連ドラ『半沢直樹』で敵役を憎々しげに演じ、特大ヒットの立役者に。堺雅人、西島秀俊をはじめ、近年、男優界をけん引するO-40(40歳以上)世代。そのトップランナーといえるのが、50歳の阿部寛と48歳の香川照之だ。
「王道の主演俳優」と「圧巻のトメ俳優」。立ち位置は全く異なるが、2人の共通点は意外に多い。まず、「不遇の時代を乗り越えた遅咲き」である点。阿部は1983年、ファッション誌『ノンノ』のオーディションを経て芸能界入り。カリスマモデルとして活躍した後、87年に映画『はいからさんが通る』で俳優に転向するも、アイドル的扱いからなかなか抜け出せず、高い身長もあだとなり、数年間まともに仕事がなかった。
一方の香川は、89年、NHK大河『春日局』で本格的に俳優活動を始めたが、東京大学卒という高学歴と、両親(歌舞伎役者の二代目市川猿翁、女優の浜木綿子)ばかりがクローズアップされ、20代は作品に恵まれなかった。
2人の突破口となったのが、「NHK大河」と「極端な演技」だ。阿部は93年、つかこうへいの舞台『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』でバイセクシャルの部長刑事役を熱演。つかに芝居をたたき込まれ、既存のイメージから脱皮できた。そして、大河『八代将軍吉宗』(95年)で全国区への足掛かりをつかむ。完全ブレイクは2000年に始まった『トリック』。自称・天才物理学者の特異なキャラ・上田をモノにし、36歳にしてコメディーの才能を開花させた。