チームラボハンガーは、4面鏡の「ミラーキューブ」の下にかかっている。キューブの中にモニターが設置されており、商品を手に取るとキューブ上にその商品のスタイリング映像や画像が映し出される仕掛け。「商品情報と手に取った時間も記録されるので、あとでデータ活用も可能だ」(工藤氏)。つまり、“ハンガーを手に取る→戻す”という無意識の行為が情報として集積されるため、「どのアイテムをどれくらいの時間、手にしたか」というデータと購買データとを照会しながら解析できる。まだ試験段階ではあるが、次世代のファッション専門店には欠かせないシステムともいえるだろう。


最後に見逃せないのが、レディス売り場のフィッティング横に設置されたフラワーウォーク。床の上をピンクのグラデーションの花びらが舞い、足を踏み入れるとそこに花びらが集まってきて道を作ってくれる。スケッチウォールと同様に、花びら一つひとつに動きがあり、ランダムなようで自然な風景にも見える。つい、足元を見ながら一歩一歩踏みしめたくなる空間だ。「フィッティングルームに行くまでがもっとワクワクした楽しい時間になるようにと開発された」(工藤氏)
いずれの仕掛けも筆者は初めて体験したが、テンションが上がることは間違いない。ショッピングのときに気分が楽しくなったり、心地良くなったりすれば、財布のひもも緩むことだろう。「今回の試みはアパレルの店内で商品を見るだけではなく、ショッピング体験そのものを楽しくすることが目的」(工藤氏)。デジタルコンテンツ自体が内装の役割を果たしていて、しかも毎回見える風景が変わるのがポイントだ。
デジタルコンテンツ満載の店内で、国内外の注目ブランドを展開
同店はヌー茶屋町2階の大半を占め、売り場面積は760平方メートル。テナント5、6店舗分の広さがある。売り場は大きく分けると、入り口近くに限定商品、音楽、書籍などグッズのコーナーとイベントスペース、その奥がアクセサリーとバッグ、そしてメンズウエアがあり、エスカレーターをはさんで靴売り場、グッズ、さらに奥がレディスウエアの売り場と続く。中央のエスカレーターを囲むようにぐるりと回遊できる売り場構成になっている。
チームラボはデジタルコンテンツだけでなく、店舗全体のデザインも手がけている。店舗デザイン担当の河田将吾氏は「どこからでもデジタルコンテンツが必ず目に入るように配置し、回遊しながら買い物を楽しめる店舗を作った」と話す。レディスウエアの売り場にある逆円すい形オブジェは、柱の多い店内で大きな柱を隠すために考えたもの。

展開する商品は「オープニングセレモニー」と日本専用企画の「オープニングセレモニー ジャパン エクスクルーシブライン」、人気ファッションモデル水原希子とのコラボレーションライン「キコ ミズハラ フォー オープニングセレモニー」といったオリジナルブランドが全体の約3割を占める。
国内ブランドでは国内外で活躍する「トーガ」や「G.V.G.V.」といった人気ブランドが並ぶ。さらに海外からの仕入れブランドとしては、ニューヨークのデザイナーブランド「アレキサンダー・ワン」「プロエンザ・スクーラー」ほか、スウェーデンのデニムブランド「アクネ」、アメリカントラッドの「バンド・オブ・アウトサイダーズ」、西海岸発の「ロダルテ」など人気ブランドから新進気鋭ブランドまで展開。アーティスティックでユニークな感性でセレクトされたメンズ、レディスとアクセサリー雑貨が多彩だ。