今、京都で泊まるなら「町家一棟貸し」が面白い
ここ数年、京都では町家を再生した旅館や滞在施設が急増している。なかでも一棟を丸ごと貸し切るスタイルは、まるで京都に暮らしているかのように過ごせると人気。料金も1人当たり1泊1万~2万円台からと意外に手ごろだ。
鴨川の眺めを独占する、くつろぎの高級町家
町家一棟貸しの先駆け的存在が「庵(いおり) 町家ステイ」。京都市中心部の好立地に11軒を展開する高級町家専門の滞在施設だ。「伝統的な空間を、椅子やベッドの生活に慣れた現代人が心地よいと感じる施設に再生しています」(庵 町家ステイ代表の三浦充博さん)。床の間のある座敷、坪庭や格子戸など和の美意識を残しているところが、無機質なホテルステイに慣れた旅行客には新鮮だ。
庵のオフィスでチェックインし、鍵を受け取ったら過ごし方は自由。鴨川に面した「和泉屋町 町家」なら、夜は祇園へ食事に出かけるのにも便利だが、近くの料理店に仕出しを頼むのもいい。向こう岸の灯を眺めながら、部屋でゆっくりと食事を楽しめる。
庵 町家ステイでは仕出しサービスが充実し、老舗料亭の懐石から手ごろな弁当まで豊富な選択肢がある。朝は、祇園の有名フレンチ「おくむら」が展開するパン店「オレノパン」の朝食などを届けてもらえる。前もってシャンパンやワインを送っておけば、部屋の冷蔵庫で冷やしておくサービスまで行う。
有名高級ホテルの2倍近い広々とした空間を独占でき、それでいてサービスはホテルや旅館に見劣りしない。町家そのものを優雅に楽しみたい人には最適な施設だ。
長期滞在にも向く機能的な設備、サービス充実のお手ごろ町家
現在京都市内で13軒の町家を一棟貸しする「町家レジデンスイン」は、海外生活の長かった代表の新木弘明さんが、「日本の良さをもっと知ってほしい」と設立した。宿泊客の7割は海外の観光客で、2人利用で1泊1人1万円台からとリーズナブルだ。
河原町や祇園に程近い路地奥に、2014年8月新設された「新道せいじ庵」は、シンプルながら清潔で居心地よい施設。土間と坪庭を備えた純和風の造りだが、2階の寝室にはベッドを備える。
長期滞在者にうれしい設備も充実している。キッチンにはレンジやコンロのほか、調理道具や器までそろい、乾燥機能付きの洗濯機も設置されている。繁華街からすぐという場所柄、買い物や外食にも事欠かない。1カ月滞在する観光客がいるというのもうなずける。
宿泊する町家に入れるのは15時からだが、京都駅から徒歩3分の事務所で事前にチェックインできる。荷物を預ければ泊まる町家まで届けられるため、京都駅に着いてすぐ身軽になって観光に出かけられる。気の利いたサービスだ。
茶道や華道、そば打ちなどの旅行者向け体験教室の紹介・申し込みや、レストランの予約なども請け負う。
(ライター 中井シノブ)
[日経おとなのOFF 2014年10月号の記事を基に再構成]
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