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正しいのは「初電」、「始発」? 一番列車の呼び方

2014/10/1

10月14日は「鉄道の日」。1872年のこの日、新橋―横浜間に日本初の鉄道が開通した。これにちなんで毎年この時期になると、週末を中心に各地で関連イベントが開かれる。鉄道は仕事や通勤・通学などで日ごろから利用する機会が多いが、ある駅に掲示された時刻表を見て「おやっ」と思った。一日の最初の電車は「始発」と呼ぶのが一般的であるはずなのに、その時刻表には「初電」と書かれている。どちらが正しいのか。気になる2つの言葉を調べてみることにした。
JR東日本の時刻表では、一番列車は「初電」と書かれている(JR東京駅)

「初電」という言葉を辞書で引くと、「その日の始発の電車。始発」(日本国語大辞典第2版)とある。「始発電車」を略して「始電」とするのならまだ納得がいくが、同じ「はじめ」でも、「始」ではなくなぜか「初」の字が使われている。

関東では「初電」が多数派?

記者が駅の時刻表で見たように、鉄道会社の間では「初電」が正しい表現ということなのだろうか。

現在、「初電」という表現を使っているのは、関東の大手私鉄では東急電鉄、西武鉄道、京王電鉄、小田急電鉄、相模鉄道が挙げられる。このうち京王電鉄は「初電」と「始発」とを併用している。「あえて使い分けることはしていない。通常は始発を使うが掲示物などでは初電を使う場合もある」というのが同社の説明だ。西武鉄道は「『初電車』という表現を使用するよう規則で明文化されている」という。このように例外もあるが、総じて関東では「初電」が多数派を占めているようだ。

一日の最初と最後の列車の呼び方
最初の列車最後の列車
JR東日本初電・始発終電・最終
JR西日本始発最終
JR東海始発最終
東武鉄道始発終電車
西武鉄道初電車終電車
京成電鉄始発終車
京王電鉄初電・始発終電
東京急行電鉄初電終電
京浜急行電鉄始発終電・終車
東京地下鉄始発電車最終電車
小田急電鉄初電終電
相模鉄道初電終電
名古屋鉄道始発・初列車終発・終列車
近畿日本鉄道始発最終
南海電気鉄道始発・初列車終発・終列車
京阪電気鉄道初発最終
阪神電気鉄道始発終電
阪急電鉄始発・初発終電・最終
西日本鉄道始発終車

関東以外の大手私鉄はどうだろう。京阪電気鉄道や阪急電鉄ではさらに別の「初発」という呼び方をしている。しかし「初発」という呼び方をしているのはこの2社くらいで、ほかの私鉄各社は「始発」という呼び方をしており、「『初電』という言い方はそもそも聞かない」(近畿日本鉄道)という。

ここまできたら、とJRについても調べた。JRは本州3社のうち、東日本だけが「初電」派。ただし、電化していないローカル線では「電車」を短縮した「電」という言い方が使えないため「始発」とし、電化した区間と使い分けている。また、駅や書店で売られている全国版の時刻表では「初電」という表現が使われている。「初電」という呼び方は一定の広がりはあるようだ。

多様な呼び方、背景に時刻表掲載の制約

歴史を振り返ると、電気を動力とする列車(電車など)が普及する以前、蒸気機関車が中心だった明治時代には、その日の一番列車は「最始発汽車」、最後の列車は「最終発汽車」と呼ばれていた。

この表現は、1894年に発行された時刻表「汽車汽船旅行案内」(庚寅新誌社)に見ることができる。

大正時代に入り、短い距離を頻繁に運行する電車が普及すると、路線数や運行本数が大幅に増えた。当時の時刻表はすべてを数字の一覧表で記載するのではなく、文章で記述する部分も多かっただけに、時刻表などにすべての列車の時刻を載せることができなくなった。ページ数の都合上、一日の最初と最後の列車の時刻だけを載せて、途中の時刻は省略するようになったのだ。

このため、朝の運行開始時刻を示すために「一番」や「始電車」「初発」――など様々な表現が考案されていったというわけだ。

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