映画に続きテレビ界でも、IT業界モノがブームに
海外ドラマはやめられない!~今 祥枝
ハリウッドでは、フェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグの自伝的映画『ソーシャル・ネットワーク』や『スティーブ・ジョブズ』を代表とする、IT(情報技術)業界を題材とする作品が目立っています。2014年は、グーグルを舞台にしたコメディー映画『The Internship』が全米公開されましたが、テレビにもその波は来ているようです。
2014年4月から、米ケーブルテレビのHBO(Home Box Office)で放送を開始した『Silicon Valley』は、サンフランシスコのベイエリアにあるIT企業の一大拠点シリコンバレーを舞台にしたコメディードラマ。2014年のエミー賞でも作品賞ほかで候補になった話題作です。
主人公は、IT企業を去った内気でナード(日本で言う"オタク")な若者リチャード。彼がサイドプロジェクトで開発したアプリの副産物であるファイル圧縮技術が認められて、新しい会社「Pied Piper」を立ち上げます。そこでの仲間との友情や裏切り、そして買収攻撃への対応などに追われる日々が描かれます。専門用語に実在の企業や個人名もばんばん登場し、IT業界のリアルな内幕が感じられる作りとなっています。本当のIT企業のサイトに見える遊び心満載の、劇中の新会社のフェイクサイトも話題です。
同作品のクリエイター、マイク・ジャッジはリアリティーを重視したと言いますが、シリコンバレーの住人からは「こんな世界じゃない」との批判もあるとか。もっともドラマ用にデフォルメされた、"ちょっと変わった世界"としてIT業界が描かれていることから、そうした声があがるのもやむなしでしょうが、番組の人気・評価ともに上々です。
ツイッターの内幕ドラマも
2014年6月からは、幅広いハイテク産業が育ってきたテキサス州ダラスを舞台にした『Halt and Catch Fire』を米ケーブルテレビのAMCが放送しました。1983年、IBMの社員で初代IBMのPCの企画に関わり、現在はシステム開発の会社で営業として働くマクミランと、技術者クラークを軸にしたドラマ。アップルを共同設立したジョブズとスティーブ・ウォズニアックを想起させるものもあり、こちらも高い評価を得ています。
ほかには、2013年に出版されたツイッターの誕生と内幕を描いたベストセラー『Hatching Twitter』のドラマ化も企画として持ち上がっています。伝記ものというよりも、事実を交えたフィクションとしてのドラマ化となれば、見どころも多くなりそうです。何よりIT業界という題材は、現代の多くの視聴者にとって非常に身近なものであることがドラマ化の利点と言えるでしょう。
………………………………………………………………………………
●今月のオススメドラマ
『エージェント・オブ・シールド』
映画『アベンジャーズ』のスピンオフ作品が登場
老舗マーベル・コミックの映画化『アイアンマン』や『マイティ・ソー』などは、舞台となる架空の世界「マーベル・シネマティック・ユニバース」を共有している(シェアード・ユニバース)。そのマーベル・シネマティック・ユニバースと世界観を共有する『エージェント・オブ・シールド』は、各作品のヒーローが集結する映画『アベンジャーズ』にも登場する国際平和維持組織「S.H.I.E.L.D.」の活躍を描いたテレビシリーズだ。
発案者はテレビドラマ『吸血キラー 聖少女バフィー』などを手がけ、映画『アベンジャーズ』を監督したジョス・ウェドン。時系列的には『アベンジャーズ』の後の話で、映画では非業の死を遂げたはずのコールソン捜査官が実は生きており、エースパイロットで兵器の専門家メリンダ・メイ、クセはあるが優秀なグラント・ウォードらとチームを組んで様々な敵と戦う。
コールソンを演じるのは、映画と同じクラーク・グレッグ。共演はミン・ナ、ブレット・ダルトンほか。映画ではシールドの長官ニック・フューリーを演じるサミュエル・L・ジャクソンが、同じ役でゲスト出演しているほか、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の後日談を描くなど、独自の物語を展開しつつ、映画との連動も見どころだ。
映画&海外ドラマライター。女性誌、情報誌、ウェブ等に映画評やインタビュー等を寄稿。「BAILA バイラ」「eclat エクラ」「日経エンタテインメント!」映画サイト「シネマトゥデイ」などに連載中。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。
[日経エンタテインメント! 2014年10月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。