ナトリウムの排泄量が多く、カリウムの排出量が少ないと高血圧に

PURE(Prospective Urban and Rural Epidemiological Study)研究では、研究者らは18カ国から10万人以上の35歳から70歳までの成人を対象に調査を実施しました。

調査対象者たちの空腹時の早朝尿の単一検体を用いて、24時間のナトリウムとカリウムの排泄量を推定し、ナトリウムとカリウムの摂取量の指標としました。予想通り、血圧はナトリウム推定摂取量の増加に伴い上昇しました。また、血圧の上昇は高血圧や高齢者の人に顕著に表れました。カリウムの排泄量は、収縮期血圧(最高血圧)に、負の関係が認められました。つまりカリウム推定摂取量が多いと、最高血圧が低くなるということです(The New England Journal of Medicine「Association of Urinary Sodium and Potassium Excretion with Blood Pressure」より)。

ナトリウムのベスト摂取量は?

NEJM論文2つ目では、17カ国、10万人以上の対象者から、空腹時の早朝尿の検体を用いて、ナトリウムとカリウムの排泄量を測定し、ナトリウムとカリウム摂取量を推定しました。平均3.7年間の追跡調査を行い、死亡や心血管イベント(心筋梗塞、狭心症など)を調査しています。

調査の結果、ナトリウム排泄量が1日7グラム(食塩17.8グラム)以上の人は、死亡または主要な心血管イベントのリスクが15%増加したことが分かりました。またこれらのリスクが最も高いのは、高血圧の人でした。

注目すべきは、ナトリウム排泄量が1日3グラム(食塩7.6グラム)未満の人でも、死亡または主要な心血管イベントのリスクが27%増加したことです。つまり、ナトリウム摂取量が1日3~6グラム(食塩7.6~15.2グラム)の人は、 摂取量がそれより多い人もしくはそれ未満の人よりも、死亡や心血管イベントのリスクがより低いことが示されたのです。

また、カリウム排泄量が多い人は、死亡や、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントのリスクがより低くなりました(The New England Journal of Medicine「Urinary Sodium and Potassium Excretion, Mortality, and Cardiovascular Events」より)。

食塩5.0グラム以上摂取で心血管死亡に影響

NEJM論文3つ目のNUTRICODE(Global Burden of Diseases Nutrition and Chronic Diseases Expert)研究は、これまでに報告されているデータを組み合わせて解析したものです。

解析の結果、2010年の世界中の人類のナトリウム摂取量は、1日平均3.95グラム(食塩10.0グラム)でした。

その後、研究者らはナトリウムの血圧に対する影響を計算。結果、2010年に発生した、世界165万人の心血管死亡は、1日2グラム(食塩5.0グラム)以上のナトリウム摂取に起因することが判明しました(The New England Journal of Medicine「Global Sodium Consumption and Death from Cardiovascular Causes」より)。

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減塩のリスクと利益にはまだ研究が必要