「銀座オペラVol.4 ヴェルディ『椿姫』ハイライト」電子オルガン伴奏、小ホールで人気歌手の歌唱堪能

歌劇場でもない小ホールで本格的なオペラを楽しみたい。しかも多彩なオーケストラの響きに乗せて。ピアノや室内楽による伴奏ではそれは無理だろう。でも電子オルガンなら管弦楽風のサウンドを生み出せるかもしれない。清水のりこが電子オルガンを弾き、小川里美や与那城敬ら人気歌手が本気で演じるヴェルディのオペラ「椿姫」を見た。

電子オルガン(エレクトーン)を弾く清水のりこ(後方)とヴィオレッタ役のソプラノ歌手、小川里美(9月9日、東京・銀座のヤマハホール)=写真提供 ヤマハ株式会社

「普段のオペラ公演とは違う繊細な表情を出して演技をする」。「椿姫」のヒロイン、ヴィオレッタを演じるソプラノ歌手の小川里美はこう話す。東京・銀座のヤマハホール。全部で333席の小規模なコンサートホールで9月9日と11日に上演された「銀座オペラVol.4 ヴェルディ『椿姫』ハイライト」。会場にはオーケストラが入るピットなどもちろんない。「お客さんとの距離が近い。本当に小さな声で歌うなど歌唱でも繊細な表現ができる」と小川は言う。

舞台の向かって左隅にはヤマハの電子オルガン「エレクトーンSTAGEA」が置いてある。ほかにはグラスがいくつも載ったテーブルやソファ、家具としての電子ピアノがあるくらい。いかにもシンプルで手作り感のある舞台だ。「客席に花びらをまいたり、紙幣を投げ込んだり、小ホールの空間でしかできないサプライズを盛り込んだ」。演出とナビゲーターを担当する彌勒(みろく)忠史はこう語る。「客がドラマの証人として観劇できる演出」を目指したという。

グラスを手に持つヴィオレッタ役のソプラノ歌手、小川里美(9月9日、東京・銀座のヤマハホール)=写真提供 ヤマハ株式会社

清水のりこは1992年電子オルガンコンクール全国大会のグランプリ受賞者。「椿姫」のほかに「トスカ」「カルメン」「イル・トロヴァトーレ」「こうもり」などのオペラやオペレッタも自ら電子オルガン用に編曲して上演した実績を持つ。「オーケストラ用の楽譜をコピーするのではなく、電子オルガン1台でオーケストラを演奏する感覚。電子オルガンのための音楽に変わっている」と清水は主張する。

現代の電子オルガンは様々な楽器の音色を出せるシンセサイザー的な機能を持つ。しかもパソコンによる打ち込みのデジタル自動演奏とは異なり、パイプオルガンと同様に演奏者が両手両足でタッチを加減して弾くマニュアル楽器でもある。「独りでオーケストラを演奏する」と清水が言うのもあながち大げさではない。

電子オルガンの音自体はPA(電気的音響拡声装置)を通じて客席に伝わるが、オペラ歌手の歌は生声だ。歌手は総勢4人。これに清水の電子オルガン、彌勒の語りを加えてのたった6人による上演だ。ハイライト版といえども、彌勒の語りでストーリーをつなぐから結局は全部通して見た気分になる。

注目記事
今こそ始める学び特集