ライフコラム

ヒット総研の視点

ヨーグルトの底力 乳酸菌がつくる“食物繊維”に脚光 日経BPヒット総研 西沢邦浩

2014/9/25

現在日本で市販されているヨーグルトに利用されている乳酸菌のなかで、クレモリス菌はEPSをよく産生する菌のようだ。

実は、フィンランドでよく食べられている国民的ヨーグルトに、カスピ海ヨーグルトのようにクレモリス菌を使った「ヴィリ(villi)」がある。斎藤教授の研究室では、1990年前後に、この粘性の高いヨーグルトのEPSについての研究を行った。「北欧でフィンランドの大腸がん罹患率が低い一因に、このヨーグルトの寄与があるのではないかと考えた」(斎藤教授)という。

がんを移植したマウスに、EPSを産生するヴィリのクレモリス菌KVS20株を与える実験を行うと、腫瘍の増殖が抑制され、マウスの生存日数が伸びた。そしてその作用は、体内に侵入した異物を食べる白血球の一種マクロファージの活性を高めたためではないかとしている[注4]

乳酸菌がつくる“食物繊維”EPSはまず、その免疫活性機能から研究が進み始めた。「EPSについてはまだまだわからない点が多い。たとえば、ジャガイモなどが作り出す植物性の多糖は栄養分の貯蔵庫になっているが、乳酸菌が何のために多糖をつくるのか、まだその意味もわかっていない」と斎藤教授はいう。

これまで、ヨーグルト市場は、主にそれぞれの商品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌で確かめられた効果を足場にして市場を拡大してきたが、これに加えて、乳酸菌がつくるEPSの解明が進み、消費者の関心を引き付けるエビデンスがいくつも登場してきたら、この巨大市場は新たなステージを迎えるかもしれない。

………………………………………………………………………………

家森所長がグルジアから持ち出そうとしたヨーグルトは、出国時に危うく取り上げられるところだったという。奇跡的に日本にたどり着いたヨーグルトは、普通のグルジア人にとっても珍しいものだったが、この奇貨は、日本に独自の「カスピ海ヨーグルト」を根付かせた。そして、乳酸菌、ビフィズス菌に続きヨーグルトの新しい可能性を切り拓くかもしれないEPSという付加価値も、日本に運んだ。

[注4]Anim.Sci.Technol.;62(3),277-83,1991およびJ.Dairy.Sci.;74,2082-8,1991
西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)
日経BPヒット総合研究所 上席研究員・日経BP社ビズライフ局プロデューサー。小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。早稲田大学非常勤講師。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見をもとに、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL