ライフコラム

ヒット総研の視点

ヨーグルトの底力 乳酸菌がつくる“食物繊維”に脚光 日経BPヒット総研 西沢邦浩

2014/9/25

■ねばねば成分は、乳酸菌がつくる食物繊維

そもそも「カスピ海ヨーグルト」のクレモリス菌がつくるねばねば成分は何なのか。

「乳酸菌が産生する菌体外多糖(Extracellular Polysaccharide)でEPSと略される。EPSは腸管免疫を刺激したり、腸内細菌叢に働きかけ、有用な乳酸菌やビフィズス菌を増やす機能、いわゆるプレバイオティクスの性質を持つ可能性がある。また、少量のEPSでも強い粘性を生み出せる。EPSにリン酸基が多く含まれれば、乳たんぱく質やホエイタンパク質と構造体をつくって粘りを出すから」と、東北大学大学院農学研究科の斎藤忠夫教授。

EPSは単糖が集まったものだが、消化吸収されやすいショ糖類やデンプンと違って難消化性のため、小腸で酵素分解されず大腸まで行く。つまり、食物繊維のように働くのだ。

斎藤教授は「EPSを“乳酸菌がつくる食物繊維”と呼んでもいいのでは」という。

これまで、食物繊維といえば植物性の食品に含まれているというのが常識だったが、似たような働きが、EPSを含むヨーグルトに期待できるかもしれない。

■免疫活性などが明らかになり始めたEPSへの期待

この成分についての研究報告は1990年代からあったが、注目を浴びるきっかけになったのは、「佐賀県有田町の小中学生がヨーグルトを半年間継続して食べたら、インフルエンザの累積罹患率が低かった」という研究を報じた2012年1月のテレビ番組だろう。小中学生が食べたのが「明治ヨーグルトR-1」(明治)だった。さらに、予防作用の背景にNK活性があり、それを増強しているのは1073R-1株(R-1乳酸菌)がつくるEPSだと報告された。実は、斎藤教授の研究室は、すでに2004年に、同乳酸菌のEPSに免疫調整作用があることを発表している[注1]

しかし「R-1」にはあまり粘性を感じない。一方、粘性が高い「カスピ海ヨーグルト」のクレモリス菌FC株がつくるEPSではどのような作用が確認されているのだろうか。

前述した家森所長のインフルエンザワクチンの抗体価上昇に関するヒト試験のほかに、成人女性での便通改善と腸内でのビフィズス菌の増加[注2]、マウスでインフルエンザ感染後の生存率改善、大腸炎の症状緩和といった報告がある[注3]

「免疫刺激作用のカギを握るのは、量よりEPSの立体構造の形など他の要因」(斎藤教授)とのことだが、クレモリス菌のEPSで確認されている便通改善作用には粘性物質の量も関係するのかもしれない。粘性が高い植物性の食物繊維では、食後血糖値や過食、肥満などの抑制作用も報じられているだけに、今後のEPS研究の進展が望まれる。

[注1]Milk Science;53(3),161-4,2004
[注2]2013年第67回 日本栄養・食糧学会大会で発表
[注3]Lett.Appl.Microbiol.;55(2),135-40,2012およびInt.Immunopharmacol.;9(12),1444-51,2009

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