ヨーグルトの底力 乳酸菌がつくる“食物繊維”に脚光日経BPヒット総研 西沢邦浩

日本の「カスピ海ヨーグルト」は偶然の賜物か

ニノさん。よく食べるというヨーグルトスープの作り方を教えてもらった。「みじん切りにしたタマネギを油で炒め、そこにヨーグルトと水を入れる。沸いてきたら、卵とネギを加えてしばらく煮て火を止め、最後にコリアンダーをのせて食べるのよ」

2014年9月初め、グルジアを訪れる機会を得た。

首都のトビリシで、104歳になる元気でおしゃべり好きのおばあちゃん、ニノ・アヌドゥロニカシュピリさんを訪ねると、「一番のクスリは玄孫(やしゃご)までいる家族との会話」と笑うが、やはりヨーグルトはよく食べているようだ。

「毎日、郊外から売りに来る人から500ミリリットルのビン入りを買い続けてきた。水分を抜いて少し固くして食べたり、温かいスープにして食べる」という。

しかし、彼女が食べているヨーグルトは、私たちが知るカスピ海ヨーグルトとは違い粘性はないようだ。首都トビリシのスーパーにも所狭しとヨーグルトが並ぶが、購入して食べてみてもやはり粘性の高いものには当たらない。個人が出店している市場にも行ってみたが、やはり違う。「カスピ海ヨーグルト」はどこで手に入るのだろう。

1986年から家森所長と共同でグルジアの食生活とヨーグルトの効能研究を行った、ナツシビリ形態学研究所老化研究部長のシモン・ダラキシビリ博士に会った。「1970年代後半以降、長寿をもたらす可能性があるヨーグルトの種菌を探す研究者たちが、西欧諸国から来始めて初めて、グルジアのヨーグルトの価値に気付いた」という。

マリアニと命名したヨーグルトの種菌を持つダラキシビリ博士

同博士によると、「グルジア人は、離乳期を過ぎたら食べ始めるほど小さいころからヨーグルトになじんでいるが、昔は食べるだけでなく痛み止めや火傷に塗る民間薬としても使用していた」という。

どことなくオリーブオイルとイタリア人を思わせる話だ。グルジアでは、5世紀くらいにはヨーグルト食の文化があったと言う。

また、「私が研究対象にしたヨーグルト、マリアニ(Mariani)は、トビリシ近郊のカルトリ地区のものだが粘性はない。しかし、家森所長が南オセチアから採取してきたヨーグルトには粘りがあった。グルジアにはほかにも多くの種類のヨーグルトと菌がある」という。

家森所長が日本に持ち込んだ粘性の高いカスピ海ヨーグルトは、グルジアの中でも特定の地方のものだったようだ。

ヨーグルトが並ぶトビリシのスーパー。グルジアでは、現地産の発酵乳を「マツォーニ(matsoni)」と呼び海外産のヨーグルトと呼称を分けている
市場でもヨーグルトが売られている。500ミリリットル入りのビンで売られていることが多い