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詰みゲー、千日手…人気女流棋士が語る当世将棋言葉 山口恵梨子女流初段

2014/9/17

最強羽生善治王座に新鋭豊島将之七段が挑む第62期将棋王座戦(日本経済新聞社主催)が始まった。将棋には独特の用語があり、「王手」や「成金」など実は将棋由来の日常語も多い。最近ではインターネット発の新語も生まれている。それらに着目して卒業論文をまとめた棋士がいる。「攻める大和撫子(やまとなでしこ)」こと山口恵梨子女流初段(22)だ。さわやかな笑顔とトークでテレビやネットの将棋番組の聞き手としても活躍中の山口女流初段に、将棋由来の言葉の最近の事情を語ってもらった。
卒論を手にする日本将棋連盟の山口恵梨子女流初段(東京都千代田区)

今春、白百合女子大学を卒業した山口女流初段。樋口一葉をはじめとする近代文学を学ぶ一方、2011年にこの連載「ことばオンライン」にも登場した山本真吾教授のもとで新語、特にネットスラングを研究した。卒論の題は「日常で使用される将棋用語の考察」。江戸時代に多く生まれた将棋由来の日常語は、現代でも新たな意味を帯びて変化しているという。

「詰んだ」のはどっち?

中学から10年間女子校に通ったんですけれど、6、7年前から「テスト詰んでる。もうダメだ」「終電詰んだ」とか「どうにもならない」という意味でクラスでよく聞いていたんですよ。「詰む」は将棋用語。「将棋の言葉を使うんだ」と思いました。しかも、なぜかいわゆる「ギャル系」の女の子が使っていましたね。

SNS(交流サイト)では、フェイスブックやブログよりもツイッターで使われていて、ネットスラングでもある「詰んだ」が最近、辞書(「三省堂国語辞典」第7版)に載ったと聞いて驚いています。

派生語の「詰みゲー」という言葉もよく耳にします。ラストまでたどり着けない難しいロールプレイングゲーム(RPG)のことを指し、動画サイトの「ゲーム実況」で自分が遊んでいるゲームへの「つぶやき」から生まれたようです。

この場合の「詰み」はゲームを詰ませるのではなく、自分が詰んでしまうことを意味しています。「こりゃ無理だ」と投了してしまう感じで、一般的な詰むの使い方と逆になっているのが面白いですね。

将棋用語の「持ち駒」は、相手の駒を取って自分の手持ちにすることです。日常語でも「自由に使える部下や手下」という意味で使われますが、最近では、就職活動で「選考に残っている企業」の意味で使われています。エントリーしている企業すべての選考に落ちたときに「持ち駒がなくなった」とか言うのです。

戦後、存亡の危機に

世界中に将棋に類似するゲームがありますが、自分が取った駒を再利用できる「持ち駒」があるのは日本の「将棋」だけです。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が将棋を「戦争ゲーム」とみなして禁止しかけた時に、升田幸三先生(実力制第四代名人)が「(日本の)将棋では取った駒も敵味方の区別なく活用している。駒を取り捨てる(=殺す)チェスの方が問題だ」と抗議して、その話は立ち消えになったそうです。誰も死なないというのが将棋の一番いいところなんです。

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