派遣・契約社員が育休を取る3つのポイント
「派遣社員に育休取得は無理」と誤解している方はいませんか? 今回は派遣社員や契約社員の方の育児休業について考えてみましょう。
育児休業でいつまで休める?
契約社員の恵美さんが、妊娠したときのこと。出産後も働きたいので、上司に育児休業の相談をすると、「契約社員は対象外。育児休業が取れるのは、正社員だけ」と言われてしまいました。
さて、これは認められることなのでしょうか?
会社には、それぞれ働き方のルールを定めた就業規則があります。しかし、法律の最低基準を下回る内容の場合、いくら定めがあったとしても無効になります。
もしかしたら、就業規則には明記されていても、上司が「思い込み」で恵美さんに返答しているかもしれません。
というのは、派遣社員や契約社員のように、期間の定めのある雇用契約の人は、平成17年4月に育児・介護休業法が改正されるまで、育児休業の取得が認められていなかったからです。
現在は、期間の定めのある雇用契約で働く人も、一定の条件を満たせば、育児休業を取得することができます。ここは、誤解のないようにしてくださいね。
育児休業は、原則として1歳未満の子を育てるために仕事をお休みできます。夫婦で育児休業をするとき、子どもが1歳2ヵ月になるまで延長することもでき、これを「パパ・ママ育休プラス制度」といいます(夫婦同時に育休を取る場合だけでなく、交代で育休を取るケースも含む。一定要件あり)。
また、保育園に入れないなど特別の理由があるときは、子どもが1歳6ヵ月になるまで、さらに育児休業を延長できます。
職場によっては、子どもが2歳、3歳になるまで育児休業を認めているところもあるでしょう。ですから、会社の制度を確認してください。原則として1歳というのは、法律上のルールです。
それでは、派遣社員や契約社員で働く人は、どのような要件を満たせば、育児休業をすることができるのでしょうか?
派遣社員・契約社員はここをチェック
育児休業を申し出る時点で、次の3つの要件をチェックしましょう。
【チェック1】 同じ事業主に引き続き1年以上雇用されていますか?
実質的に雇用関係が続いていることをいいます。たとえば、年末年始や週休日を空けて契約が結ばれている場合でも、実質的に継続していると考えます。
派遣社員の場合、「派遣元」が同じことがポイント。派遣元が引き続き1年以上同じであれば、派遣先が変わってもまったく問題ありません。
【チェック2】 子の1歳の誕生日以降も、引き続き雇用されることが見込まれていますか?
労働契約が更新される可能性について、書面だけでなく、口頭でも示されていれば「可能性あり」と判断できます。
ただ、契約更新の可能性について、特に明示されていないときは、同じ地位にある他の派遣スタッフの契約更新状況や、会社側のこれまでの言動が実態を判断するポイントになります。
もし、書面で「会社の業績に応じて契約終了時に判断する」など、はっきり更新について書かれていなくても、更新可能性の明示があるとみなして考えます。
【チェック3】 子の2歳の誕生日の前々日までに雇用契約が満了し、更新されないことが明らかではないですか?
労働契約の更新回数や期間に上限がなければ、問題ありません。ただし、更新回数や期間の上限が最初から決められている場合は要注意。
契約更新したときの期間終了日が、1歳誕生日の前日から2歳誕生日前々日までの間にあると、「更新されないことが明らか」とみなされてしまいます。
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いかがでしょうか? 3つのチェックポイントにすべて「YES」であれば、派遣社員や契約社員の方も育児休業を取ることができます。
まずは、1年以上引き続き、同じ事業主の元で働いているかどうか。これは判断するうえでの目安になります。あとは個々の雇用契約や職場環境によりますから、それぞれ実態で判断していくことになります。最初から「無理」とあきらめずに、粘り強く交渉していきましょう。
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。平成17年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロンを主宰。著書に「知らないともらえないお金の話」(実業之日本社)をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。
[nikkei WOMAN Online 2014年6月24日付記事を基に再構成]
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