「カレーの矛盾」が原動力? 即席カレー戦国史編集委員 小林明

「新たなカレーの矛盾」はバブル経済から生まれた

第3次戦争は90年代半ば~2000年代前半に起きた。バブル経済の崩壊を受け、即席カレー市場も伸び悩み始めた時期だ。このころになるとさらに「新たなカレーの矛盾」が表面化する。大人も子どもも舌が肥え、従来のカレーの風味では満足できなくなったからだ。

グルメブームで高級レストランが急増し、一般庶民が海外を旅行するのも珍しくなくなった。味覚も様々な経験を重ね、より本格志向が強まっていった。ファミリーレストランやファストフードも普及し、誰でも手軽に国際的な料理を楽しめるようになった。すると一昔前のような甘さ一辺倒のカレーでは大人も子どもも満足できないようになる。

「こく」「まろかやさ」「熟成」などの新たな風味・食感へ

そこで各社が相次いで打ち出したのが「こく」「まろやかさ」「熟成」「とろける」などの新たな風味や食感。

95年に江崎グリコが一晩寝かしたうまさを打ち出した「熟カレー」(大箱220円、小箱130円)を発売。翌年の96年にはハウス食品が「こく」と「まろやかさ」をブレンドした「こくまろカレー」(100グラム入り120円、200グラム入り200円)、01年にはエスビー食品が圧力鍋で煮込んだようなとろみとうまみがある「とろけるカレー」(200グラム入り200円)を発売。

主要商品の顔ぶれが様変わりした。

「熟カレー」はグリコらしくチョコやキャラメルの製造技術を応用して開発。そのコンセプトは、それぞれ別の釜で作ったルウを2段重ねにして「こく」と「香り」を楽しめる現在の「2段熟カレー」(144グラム220円)にも継承されている。

その後、即席カレーは激しい辛さを追求したマニア向け、カロリー控えめの健康志向タイプ、世界各地のエスニックカレーなど、好みの多様化に対応した様々なこだわりの商品が増えてくる。

辛さで表面温度が下がる効果も……

最後にカレーに関するウンチクを少し。

暑い季節にはカレーが合うというイメージがある。なぜだろう? 実は、辛いスパイスを食べると、その直後は体の皮膚の表面温度が上昇するが、しばらくすると、表面温度が下がって涼しく感じるようになる効果があるらしい。このため、食欲を増進し、夏バテなどで衰退した体力を回復する食事にはうってつけなのだとか。カレールウの売り上げも年間を通じてほぼ一定しているが、細かく見ると、初夏から夏にかけて売り上げがやや伸びる傾向がうかがえるという。

ちなみに日本人1人が1年間にカレーを食べる平均回数は78回。月間で6.5回、つまり1週間に1回以上は食べている計算になる。また、家庭で調理したカレーを食べる月間の平均回数は2.5回。これらは赤ん坊まで含めた総人口から算出した数値なので、カレー好きが実際にカレーを食べる頻度はさらに多いと考えてよさそうだ。

夏バテ対策にカレーを食べながら、たまには日本の国民食やライフスタイルの変遷などに思いをはせてみるのもいいかもしれない。

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