「嫌われる勇気」は「幸せになる勇気」と同じ
どきっとするタイトルが目を引く、20~30代の女性たちにも大人気の書籍『嫌われる勇気』。心理学者のアルフレッド・アドラーが提唱する「アドラー心理学」を基に、私たちが日頃抱えている人間関係の悩みをシンプルに解決し、“嫌われる勇気”を持ちながら自分らしく生きるための方法を紹介した本だ。
そもそも私たちは、「嫌われたくない」と思いながら日々を過ごしている。にもかかわらず、嫌われる勇気を持つことを勧めるのはなぜなのだろう。
「アドラー心理学では、嫌われる勇気を持つことこそが、幸せな人生につながると考えます」。そう話すのは、この本の共著者で哲学者の岸見一郎さん。
「周囲の人たちから嫌われないようにするには、常に周りの人の顔色をうかがう必要があります。それでは、“ありのまま”の自分として生きることは難しくなるし、物事の責任を人のせいにしてしまいかねません」
好かれようと思うと、他人の期待に応えようと振る舞ってしまう。その結果、本来の自分を出せなかったり、我慢ばかりが続いたりして、ストレスをためてしまいがちだ。そこで必要になるのが、嫌われる勇気。
「自分の人生は自分だけのもの。人の期待に応えるのをやめ、自分が『人としてこうありたい』と思える行動を取るよう心がけるだけで、自由を実感できる生き方ができる。自分の素直な気持ちや意志を貫く勇気。いい換えれば、それは『幸せになる勇気』でもあるのです」
価値観をハッキリさせることから始めよう
嫌われる勇気を持つために、まず必要なのは「自分にとって譲れないポイント」をハッキリさせること。
好きなこと、嫌いなことは何か。どんな振る舞いをしているときの自分に対して「価値がある」と思えるのか。自分の軸になるものを見極めた上で、その価値観に合った言動を心がけてみよう。
とはいえ、嫌われる勇気を持つ上で注意しなくてはいけないこともある。それは「自分の意志をきちんと伝えること」と、「自分の価値観を周囲の人たちに押しつけて、他人を変えようとすること」とは違うと理解しておくこと。
「私たちは基本的に、他人を変えることはできません。周りの人たちに自分の価値観を無理強いしたりすることは、人間関係のトラブルのもとです」
変えられるのは自分だけ。とはいえ、人間関係は相手があって初めて成り立つもの。自分のものの見方や捉え方を変えることが、日々の言動を変えることにつながる。そして「多くの場合、自分が変わると周囲の人も変わらざるを得なくなります。アドラー心理学は『勇気の心理学』です。自分が変わる勇気を持つこと。これだけで、人間関係の悩みは薄らいでいきますよ」