スマホが出す「夜の光」 肥満やうつのリスク要因か日経BPヒット総研 西沢邦浩

「転ばぬ先」のビジネスをどうローンチさせるか

ブルーライト対策商品は、成功を収めた「JINS PC」だけでなく、網膜の黄斑と呼ばれる場所に多く存在し、ブルーライトから目を守っている色素ルテインのサプリメントなども発売されており、95%ブルーライト発生を減らす新LEDも昭和電工が開発中だという。「カラダフィット」(エムティーアイ)など、ポータブルな活動量計を用いた睡眠測定サービスも登場している。

JINS PCのサイト
「カラダフィット」(エムティーアイ)

大きく分けて、この分野には「ブルーライト/光の影響を減じる商品」と「体内時計の乱れを直したり、乱れをチェックする商品やサービス」があるが、前者は、眼精疲労解消といった、実感が得やすい商品であれば消費者への訴求は比較的行いやすい。

一方、生活習慣病やがんといった疾病を防ぐことが目的となる体内時計関連の機能は、利用者が効果を体感しにくい面もあるため、購入動機をどう高めるかに工夫が欠かせない。

今後は、新たな薬や機能性食品が開発される可能性も大きい。

たとえば、最近米ソーク研究所が発表した研究では、消化管や視交叉上核で作られる血管作動性腸管ペプチド(VIP)もしくはLhx1という遺伝子を制御する物資が特定されれば、体内時計の乱れが効率的に調整できる可能性が示された[注6]

また、Bmal1という時計遺伝子を壊し、体内時計のリズムを狂わせることで肥満したマウスに、魚油成分(EPA、DHA)を与えたら、時計の乱れも肥満も改善したという報告もある[注7]

いずれも基礎研究だが、後者のように、食経験のある食材に含まれる成分が、光や時計の乱れの害を防いでくれるとすれば興味深い。実際に、脳の主時計はブルーライトで調整されるが、心臓や肝臓、腸といった臓器にある末梢時計は、食事のタイミングやその中身次第でリセットされることはほぼ明らかになっている。

特に、きちんとした時間にとる朝ご飯の体内時計リセット作用は強いようだ。

………………………………………………………………………………

言ってしまえば、「朝日とともに起き、きちんと朝ご飯を食べ、日中は太陽光とともに過ごし、夜早めに就寝する」という、長くヒトが送ってきた生活を取り戻せば、夜のブルーライトや体内時計の乱れの問題はほぼ解消するはずだ。

しかし、24時間リアルタイムで世界とつながるのが与件となってしまった以上、現実的に後戻りは難しい。

不安がある向きには、まず、しっかりお日様の光を浴びることをお薦めしたい。

夜勤が多い看護師も日中の光を浴びることで血圧が低下し、陽気になったとか、太陽光を浴びる職場環境で働くビジネスマンは睡眠や生活の質がいいという最新の研究もあるからだ[注8]

[注6]Elife;3,e03357,2014
[注7]Nature Medicine;18(12), 1768-77,2012 
[注8]J Clin Sleep Med;10(6),603-11, 2014など
西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)
日経BPヒット総合研究所 上席研究員・日経BP社コンシューマ局プロデューサー。小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。早稲田大学非常勤講師。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見をもとに、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。
注目記事
今こそ始める学び特集