2014/9/9

遺伝率は0.5……ってこれはどういう意味?

これまでに米国、カナダ、フィンランド、オランダ、クロアチアほか、様々な国と人種を対象にして睡眠時間に及ぼす遺伝と環境の影響度を比較する調査研究が行われた。その結果、成人の睡眠時間の遺伝率は0.30~0.50と推定されている。特筆すべきは乳幼児の睡眠時間の遺伝率が0.60~0.70と高いことだ。ナルホド、と納得して頂ける方はほとんどいないであろう。遺伝率、0.50…いったいなんだソレ。

遺伝率の概念は複雑だが端的に言えば「ある表現型(身体的特徴や疾患)がどの程度遺伝によって決定されるか」を示す尺度である。例えば遺伝率0.5とは、その集団における睡眠時間の分散(ばらつき、個人差)の50%が遺伝的要因で説明できることを意味している。何はともあれここでは、遺伝率が大きいほど個人差に遺伝が深く関係していることを示すと承知いただければ結構である。

「睡眠時間は遺伝で決まるのか、環境で決まるのか、白黒つけろ!」というのはご無体である。睡眠時間に限らず、ある生体現象が遺伝か環境のどちらかの影響を100%受けるなどということは一般的にない。

睡眠時間もまた遺伝と環境の相互作用(バランス)により決定されている。バランスと言っても遺伝と環境が同等に作用しているわけではなく片方の影響がより強いのが普通であり、その割合は表現型(身体特徴や疾患)によって大きく異なる(下図)。また、遺伝的影響も単一の遺伝子が担うのではなく、複数の(時には多数の)遺伝子がさまざまな影響度を発揮している場合が多い。これを多因子遺伝と呼ぶ。睡眠時間もまた多因子遺伝的に決定されるのである。

睡眠はどのあたりかな?
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結局のところ、睡眠時間の遺伝率は高いのか
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