ライフコラム

生きものがたり

季節を告げる虫の鳴き声 楽しむ文化は古くから

2014/8/23

「カナカナゼミ」とも呼ばれるヒグラシ=写真 永幡嘉之

セミやキリギリスの仲間の鳴き声は古くから季節を告げる風物詩として人々に親しまれてきた。虫たちの中には、音で雌雄が交信する種類が少なくない。

■カタカナ表記で音色や風情を込めて表現

7月の朝夕に涼しい声を響かせていたヒグラシの声はすっかり聞こえなくなった。入れ替わるように、立秋を過ぎるとツクツクボウシの声が聞こえはじめ、お盆になると数も増えて、盛んに鳴きたてる。子供にとっては、夏休みの終わりが近いことを告げる声でもある。暑さが続く中でも、セミの種類の一部が入れ替わりながら、季節は確実に秋に向かって進んでゆく。夜の草むらでは、キリギリスやコオロギの仲間が成虫になり、それぞれの鳴き声を響かせている。

ハヤシノウマオイの別名は「スイッチョ」=写真 永幡嘉之

虫や鳥の声は古くからカタカナに置き換えて表記されてきた。ヒグラシは「カナカナゼミ」とも呼ばれるが、もし厳密に音を表記するならカとケの中間のような音を断続的に出すので「ケケケケケ」とでも表記することになる。実際には「カナカナ」のほうがよほど伝わりやすい。

「スイーッチョン」の声で親しまれるハヤシノウマオイは羽をこすりあわせて「ツーッツン」と発音する。だが「ツーッツン」ではどの虫のことか分からないし、「スイーッチョン」と表すことで、音程ばかりでなく「澄んだ音色」までもが表現される。

鳴き声のカタカナ表記は自然界に存在する音をどのように再現して人に伝えるかという知恵であり、音楽に例えるならば、楽譜のようなもの。季節を伝える暦であり、生活の一部だった虫の声を音色や風情まで込めて表現することに、日本人の自然観がよく表れている。

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