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「たかがお芝居」 胸に刻む演出家の言葉(井上芳雄)

第100回

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NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

井上芳雄です。ミュージカル『ナイツ・テイル-騎士物語-』が9月13日、大阪・梅田芸術劇場メインホールで開幕しました。新型コロナウイルスの影響で、初日の予定だった9月7日から12日までの公演が中止となったので、6日遅れでの開幕です。無事に幕が開けられたことに感謝すると同時に、1回1回の公演を大事に日々を積み重ねていきたいとあらためて思いました。

『ナイツ・テイル』は、シェイクスピア最後の作品『二人の貴公子』(共作・ジョン・フレッチャー)をミュージカル化したオリジナル作品。従兄弟同士でライバルでもある2人の騎士が、同じ女性を愛したことで、愛と名誉と生死をかけて決闘を挑むことになるという話です。堂本光一君と僕が騎士を演じて、2018年に帝国劇場で世界初演されました。今回は3年ぶりの再演となります。

初日はいつも緊張しますが、今回はそれだけではなく、いろんな思いが入り交じりました。演劇界全体を見ても、やはり新型コロナの影響で公演が思うようにできないカンパニーがたくさんあります。そういうカンパニーのみんなの気持ちも考えたり、直前まで自分たちも本当にできるのか不安になったりもしました。堂本光一君もカーテンコールで言っていたように、中止になった公演を楽しみにしていたお客さまには本当に申し訳ないですし、それだけに舞台に立って大きな拍手や反応をいただいたときは感動もしました。

お客さまも、最初はかたずをのんで見守るという感じでした。緊張されていたのかもしれません。でもすぐに大きな拍手が起こって、笑い声もたくさん聞こえてきました。僕も、久しぶりに『ナイツ・テイル』の舞台に立って、大きなミュージカルってなんて楽しいんだろうと思ったし、なにより客席の反応がうれしかった。うれしすぎて、セリフを忘れてしまったほどです(笑)。それくらいお客さまのボルテージがどんどん上がってきて、最後のカーテンコールからあいさつまで、楽しんでくださっているのが伝わってきました。劇場でお芝居をやれるのって、こんなに幸せで、楽しいことなんだ。この1年半、毎回思っていますが、今回もまたそう感じました。

公演中止の間、ホテルで待機していたとき、オンラインミーティングで脚本・演出のジョン・ケアードに言われて、本当にそうだと思った言葉があります。「たかがお芝居なんだ」。英語ではプレイ(遊び)という言葉が演劇を表します。「プレイなんだから、命を危険にさらしたり、シリアスになってやるものじゃないんだよ」。ジョンは以前からそう言っていて、今回もまたそれを話してくれて、すごく納得しました。みんな何か新しいワクワクすることを体験したくて、その物語や空間や時間を一緒に楽しもうと、劇場に集まって来ている。「たかが演劇、たかがお芝居なんだ」。そう思うと、1週間も公演できないとかシリアスに考え過ぎる必要はないのかもしれないと、救われたような気持ちになりました。だから初日も遊びに出る感覚で、状況は大変だけど、仲間が集まってみんなに会いに行くみたいな気持ちでした。そして、本気で遊びたい。ジョンの言葉は、常に胸に刻んでいます。

ジョンはロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクターで、『レ・ミゼラブル』初演を手がけた世界的な演出家です。いつも冷静で、ひょうひょうとしているのは変わりません。そんな人柄のおかげでしょうか、キャストやスタッフもそれほどピリピリしている感じはなく、ジョークを言いながら開幕を待っていました。

 ホテルでの過ごし方は、基本的にみんな1人でいたので、キャストも各自それぞれでした。光一君はほとんど外に出ずに過ごしていたと思うし、僕らもちょっと散歩や買い物に出るくらい。岸祐二さんは毎日淀川の川辺を散歩していて、そこで1人自主稽古をしている音月桂さんを見つけて、写真に撮って送ってくれたりもしました。みんなの行動を見ていると、大人というのかな、自分なりにできることややりたいことを淡々としている姿が印象的でした。

僕は、経済の本とかを心のおもむくままに読みました。普段は落ち着いて読める時間がないので、楽しかったですね。コメンテーターの仕事もするようになって、分からないことがいっぱいあるので、株式って何だっけとか、経済の仕組みから勉強しました。ミュージカルの本も、1980年代のブロードウェイの様子を描いたものを読みました。トニー賞の授賞式が9月下旬にあるし、これから先どういうミュージカルをやりたいかとか、オリジナルでどんなものを作れるのか、といったことも考えながら。興味があることをゆっくり考える余裕ができたという意味では、充実した時間でした。

俳優仲間からは「大変だね」とよく連絡が来ました。たしかに大変ではあるのですが、意外に普通に、のんびりと過ごしていました。同時に、みんなと話していたのは、1週間くらいで初日が迎えられるだろうという希望があったから落ち着いていられたけど、もっと先が見通せない状況だったら、また精神状況も違っただろうねと。今は誰に何があってもおかしくないので。とにかく、幕が開けられたのは幸せなことです。

舞台の上でどう感じるかを大事に

公演は始まったばかりですが、再演なので作品への理解が深まった実感があります。キャラクターの違いやシーンの意味がはっきりしてきたように思います。シェイクスピアのセリフは口語体ではないので、言いにくいところがあるのですが、それもなじんできて、テンポがよくなった上に分かりやすくなったのではないでしょうか。それは僕たち演じる側の感覚なので、お客さまもそう感じてくれているといいのですが。

僕は、今年に入って『日本人のへそ』『首切り王子と愚かな女』とストレートプレイ(セリフだけの演劇)が続いていて、セリフを言うことに慣れたからか、初演のときと同じセリフをしゃべってもずいぶん感覚が違います。今回はすごく楽に、その瞬間を生きているみたいな気がします。今思うと、大きいミュージカルでは演技以外に気にしなければいけないこともたくさんあるので、演技の集中力が足りないところがあったかもしれません。

今はジョンの「たかがお芝居なんだ」という言葉を生かして、これを表現しなきゃと気負うのではなく、肩の力を抜いて、舞台の上でどう感じるかを大事に演じています。すると、相手の言っていることを一生懸命聞かないと次に進めないし、それで物語がどんどん流れていっているように感じます。必然性を持って物語が進んでいくというのかな。神話が出てくるし、騎士が活躍するシェイクスピア劇なので現代から遠い世界の話なのですが、それが身近な日常で起こっている出来事のように見えるなら、とてもすてきなことです。

開幕できたといっても、もちろんそれがゴールではなく、大阪・東京・福岡とまだ90公演近くあります。これから先、いつどうなるか分からないですが、今までもそうだったように、今日できたことに感謝して、1回1回の公演を大事に日々を積み重ねていきたいと思っています。

『夢をかける』 井上芳雄・著
 ミュージカルを中心に様々な舞台で活躍する一方、歌手やドラマなど多岐にわたるジャンルで活動する井上芳雄のデビュー20周年記念出版。NIKKEI STYLEエンタメ!チャンネルで月2回連載中の「井上芳雄 エンタメ通信」を初めて単行本化。2017年7月から2020年11月まで約3年半のコラムを「ショー・マスト・ゴー・オン」「ミュージカル」「ストレートプレイ」「歌手」「新ジャンル」「レジェンド」というテーマ別に再構成して、書き下ろしを加えました。特に2020年は、コロナ禍で演劇界は大きな打撃を受けました。その逆境のなかでデビュー20周年イヤーを迎えた井上が、何を思い、どんな日々を送り、未来に何を残そうとしているのか。明日への希望や勇気が詰まった1冊です。
(日経BP/2970円・税込み)
井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)、『夢をかける』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第101回は10月2日(土)の予定です。

夢をかける

著者 : 井上芳雄
出版 : 日経BP
価格 : 2,970 円(税込み)

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